「鼠径ヘルニアの手術でメッシュを入れたが、MRI検査を受けても大丈夫か」。手術のあと、他の病気で MRI をすすめられたときに、多くの方が心配される点です。このページでは、メッシュの素材、固定具の扱い、検査前に確認しておくことを整理します。
結論
鼠径ヘルニアの手術で使われるメッシュの多くはポリプロピレンなどの非金属素材で、MRI検査を受けられるのが一般的です2。ただし「自分に入っている製品を確認したうえで検査先に伝える」ことが原則です。
むしろ実際に困りやすいのは、検査そのものより情報が足りないために検査が見送られてしまうことです。日本磁気共鳴医学会の総説も、この点を指摘しています。医療機器の情報が不十分なことを理由に、不必要に検査を中止するのは避けるべきだという内容です2。
メッシュの素材と「MR Conditional」
鼠径ヘルニアの修復に使うメッシュは、ポリプロピレンやポリエステルなどの樹脂製が標準的です3。これらは金属ではありません。そのため、MRIの強い磁場で動いたり、熱をもったりする性質はありません。
体内の医療機器は、MRIとの関係で次のように区別されます。自分の製品がどれに当たるかは、製品の添付文書やメーカーの情報で確認できます。
| 区分 | 意味 |
|---|---|
| MR Safe | 磁場の影響を受けない。既知の危険がない |
| MR Conditional | 決められた条件(磁場強度など)を守れば検査できる |
| MR Unsafe | MRI検査を行ってはならない |
最近のインプラント(体内に入れる医療機器)の多くは、非磁性(磁石につかない)の材料でできています。そのため、MRI検査の禁忌(検査をしてはいけない条件)にはあたらないとされています2。
TAPP法のあとにMRIを行った研究
当院が主術式とする TAPP法(腹腔鏡下腹膜前修復術)の術後に、実際にMRIを行った研究があります。この研究では、鼠径ヘルニアに対してTAPP法を受けた患者に、3テスラのMRIを術後4週と術後1年に実施しています。目的は、メッシュの縮みや位置のずれを評価することでした。MRIに関連した安全上の問題は報告されていません1。
この研究の本来の目的は、「メッシュをMRIで観察できるか」を調べることでした。見方を変えると、メッシュが入った状態で強い磁場のMRIを行っているということでもあります。
注意するのはメッシュ本体より「固定具」
実際に確認したいのは、メッシュそのものより固定に何を使ったかです。固定の方法にはいくつかあります。
チタンは、磁石に強く引き寄せられる性質(強磁性)を持ちません。そのため、MRIの磁場で動く心配は基本的にありません。ただし、金属があると、その周りの画像にゆがみ(アーチファクト)が出ることがあります。鼠径部を詳しく見たい検査では、画像の読み取り(読影)に影響する場合があります。
検査の前に確認すること
MRIを予定している場合は、次の3つを手術を受けた医療機関で確認してください。そのうえで、検査を受ける医療機関に伝えてください。
手術を受けた医療機関には、使用した医療機器が手術記録として残っています。退院時の説明書やインプラントカードをお持ちなら、それを検査先に見せるのが確実です。「メッシュが入っている」とだけ伝えるより、製品名まで伝えたほうが、検査がスムーズに進みます。
当院で手術を受ける方へ
当院は2026年12月に開設し、2027年1月5日に保険診療を始める予定です。開院後に手術を受けた方には、使用したメッシュの製品名・素材と、固定に用いた方法を記載した情報をお渡しする方針です。将来ほかの医療機関でMRIを受けるときに、そのままお使いいただけます。
関連ページ:鼠径ヘルニア(脱腸)の症状と日帰り手術/鼠径ヘルニアは様子を見ていい?経過観察と手術の判断/鼠径ヘルニアの手術費用
よくある質問
Q. 手術のあと、どのくらい経てばMRIを受けられますか?
メッシュの素材を理由とした待機期間(待つ期間)が、一律に決まっているわけではありません。ただし、術後の経過や検査の目的によって判断が変わります。手術を受けた医療機関と検査を受ける医療機関の両方に、ご確認ください。
Q. CTやレントゲン、超音波はどうですか?
CT・レントゲン・超音波は、磁場を使わない検査です。そのため、磁性による問題は起こりません。なお、ポリプロピレンのメッシュはX線を通しやすく、レントゲンやCTでは写りにくい性質があります。つまり、「画像に写らない」からといって「入っていない」わけではありません。
Q. メッシュがあるとMRIの画像は見えにくくなりますか?
メッシュ本体は金属ではないため、画像への影響は限られます。影響が出るとすれば、メッシュの固定に金属製のタッカー(留め具)が使われている場合です。その周りに、画像のゆがみ(アーチファクト)が出ることがあります。鼠径部そのものを詳しく見る検査では、固定方法を事前に伝えておくと、判断がしやすくなります。
ご相談・ご予約
当院は2026年12月開設・2027年1月5日 保険診療開始予定です。手術に関するご相談・ご予約の受付開始時期は、下記の受付状況ページでご案内します。
参考文献
参考文献(3件)を読む
- Lechner M, et al. Surgical and radiological behavior of MRI-depictable mesh implants after TAPP repair: the IRONMAN study. Hernia. 2019;23(6):1133-1140. (PMID: 31367964)
- 土橋俊男. MRI検査における体内インプラントへの対応. 日本磁気共鳴医学会雑誌. 2019;39(4):117-125. (doi:10.2463/jjmrm.2019-1683)
- HerniaSurge Group. International guidelines for groin hernia management. Hernia. 2018;22(1):1-165. (PMID: 29330835)
この記事の執筆・監修:黒河内 喬範(外科専門医・院長就任予定)/高宮 達郎(麻酔科専門医・副院長就任予定)。※当院は開設準備中です(2026年12月開設・2027年1月5日 保険診療開始予定)。記載の診療内容は開院後の予定です。MRI検査の可否は、実際に体内にある製品と検査の条件によって決まります。必ず検査を受ける医療機関にご確認ください。