高額療養費制度は、1か月に払う医療費が高くなりすぎないように「上限」を決めておく、公的な健康保険のしくみです。上限を超えた分は、あとから戻ってくるか、手続きをしておけば最初から請求されません。手術を受けるときに、いちばん負担を軽くしてくれる制度です。
どんな制度?
病院の窓口では、かかった医療費の1〜3割を払います。手術を受けると、この1〜3割でもまとまった金額になります。
そこで、1か月に払う額が一定の「上限」を超えたら、超えた分は健康保険が負担するというしくみが用意されています。これが高額療養費制度です。
1か月に払う医療費には、収入に応じた「上限」が決まっています。上限を超えた分は、あとから戻ってくるか、手続きをしておけば最初から請求されません。
まず「自分は何割負担か」を確認しましょう
高額療養費制度の話に入る前に、窓口で払う割合を確認しておくと分かりやすくなります。収入は変わることがありますが、年齢は誰にとっても上がっていくものです。まずは年齢で見てください(当院の対象は小学生以上の方です)。
| 年齢 | 窓口で払う 割合 | どんな人が当てはまる? |
|---|---|---|
| 小学校入学後 〜69歳 | 3割 | 全員(当院を受診される多くの方がここに当てはまります) 18歳の年度末までの方は、東京都と区市町村の子ども医療費助成(マル子・マル青)で保険診療の自己負担分が助成されます。武蔵野市では18歳に達した日以降最初の3月31日までが対象です。所得要件や自己負担の有無は区市町村によって異なるため、お住まいの自治体にご確認ください。 |
| 70〜74歳 | 2割 | 一般・低所得の世帯の方 |
| 3割 | 現役並み所得者の方(課税所得145万円以上) | |
| 75歳以上 | 1割 | 一般・低所得の世帯の方 |
| 2割 | 一定以上の所得がある方 課税所得28万円以上、かつ「年金収入+その他の合計所得金額」が単身世帯で200万円以上/2人以上の世帯で合計320万円以上 | |
| 3割 | 現役並み所得者の方(課税所得145万円以上) |
※75歳以上の「2割」は2022年10月から始まった区分です。導入時に設けられていた、負担増を月3,000円までにおさえる配慮措置は2025年9月30日で終了しています。※「年金収入」に遺族年金・障害年金は含まれません。※65〜74歳でも、一定の障害があると広域連合に認定された方は後期高齢者医療制度の対象になります。※ご自身の割合は、保険証または資格確認書に記載されています。※子ども医療費助成(マル子・マル青)を受けている方は、医療証を保険証といっしょに受付へお出しください。
上限額はいくら?(69歳以下の方)
上限額は、加入している健康保険に届け出ている収入によって5つの区分に分かれています。
| 区分 | 年収のめやす | 1か月に払う上限額 |
|---|---|---|
| ア | 約1,160万円〜 | 270,300円+(医療費−901,000円)×1% |
| イ | 約770万〜1,160万円 | 179,100円+(医療費−597,000円)×1% |
| ウ | 約370万〜770万円 | 85,800円+(医療費−286,000円)×1% |
| エ | 〜約370万円 | 61,500円 |
| オ | 住民税非課税の世帯 | 36,900円 |
※「医療費」は、健康保険が負担する分もふくめた総額(10割)のことです。※金額は2026年8月1日から2027年7月31日までの診療分に適用されるものです(2027年8月から再び見直される予定です)。最新の金額は、ご加入の健康保険にご確認ください。
計算式だと分かりにくいので、医療費の総額が40万円だったときにどうなるかをグラフにしました。
総医療費が40万円だった場合の比較です(保険診療の場合)。区分ア・イの方は上限額に届かないため、払い戻しはありません。窓口での3割負担 120,000円がそのままの負担になります。
70歳以上の方の上限額
70歳以上の方は、69歳以下とは別の区分になります。外来だけの場合は、さらに低い上限額が設けられています。
| 区分 | 年収のめやす | 外来だけの上限額 (個人ごと・1か月) |
|---|---|---|
| 現役並みⅢ | 約1,160万円〜 | 270,300円+(医療費−901,000円)×1% |
| 現役並みⅡ | 約770万〜1,160万円 | 179,100円+(医療費−597,000円)×1% |
| 現役並みⅠ | 約370万〜770万円 | 85,800円+(医療費−286,000円)×1% |
| 一般 | 約156万〜370万円 | 22,000円 |
| 低所得者Ⅱ | 住民税非課税の世帯 | 11,000円 |
| 低所得者Ⅰ | 住民税非課税かつ所得が一定以下 | 8,000円 |
※70歳以上の方は、「外来だけの上限額(個人ごと)」と「入院をふくめた世帯全体の上限額」が別に決められています。上の表は外来だけの上限額です。どちらが使われるかは、ご加入の健康保険にご確認ください。
手続きの3つの方法
窓口での支払いを、はじめから上限額までにおさえることができます。手間は「マイナ保険証を使えるかどうか」で大きく変わります。
マイナ保険証があれば、手続きは受付の数十秒で終わります。お持ちでない場合は、加入先の健康保険への申請・郵送での受け取り・受付での提示という3つの手順が必要で、しかも期限があります。
限度額適用認定証には「申請した月の1日から有効」というルールがあり、前の月にさかのぼって発行することはできません。手術を受ける月に入ってから慌てて申請すると、間に合わないことがあります。また、窓口で申請してもその場では受け取れず、後日の郵送になります(全国健康保険協会の場合、受付からおおむね1週間)。手続きの方法や日数は加入先の健康保険によって異なりますので、早めにご確認ください。
| マイナ保険証 を使う | 限度額適用認定証 を用意する | |
|---|---|---|
| 事前の手続き | 不要 | 必要(加入先の健康保険に申請) |
| 申請の期限 | なし | 受診する月のうちに 前の月にさかのぼって発行はできません |
| 受け取り | — | 郵送 全国健康保険協会の場合、受付からおおむね1週間 |
| 受付ですること | 機械にカードを置き、 限度額情報の提供に同意する | 認定証を提示する |
| 間に合わないと | — | 窓口でいったん全額(3割)を支払い 払い戻しの申請をしてから、戻るまで約3か月 |
※マイナンバーカードをお持ちでも、健康保険証としての利用登録がお済みでない場合は使えません。※資格確認書をお使いの方は、限度額適用認定証の申請が必要です。
対象になるもの・ならないもの
| 対象になるもの | 対象にならないもの | |
|---|---|---|
| 内容 | ○ 診察・検査の費用 ○ 手術の費用 ○ 麻酔の費用 ○ 保険がきくお薬の費用 |
× 差額ベッド代(個室代) × 入院中の食事代 × 診断書などの文書料 × 保険がきかない自費の診療 |
※当院は入院設備のない診療所のため、差額ベッド代・入院中の食事代はかかりません。
上限額は「1か月ごと」に計算されます
ここが見落とされやすい点です。上限額は「その月の1日から末日まで」で区切って計算されます。
上限額は「その月の1日から末日まで」で区切って計算します。月の後半に手術をすると、検査と手術が別の月に分かれてしまうことがあります。
4回目からは、もっと下がります
直近12か月のあいだに3回以上上限額に達した場合、4回目からは上限額がさらに下がります(多数回該当といいます)。
| 区分 | ふだんの上限額 | 4回目からの上限額 |
|---|---|---|
| ア | 270,300円+α | 140,100円 |
| イ | 179,100円+α | 93,000円 |
| ウ | 85,800円+α | 44,400円 |
| エ | 61,500円 | 44,400円 |
| オ | 36,900円 | 24,600円 |
※「+α」は「(医療費−一定額)×1%」の部分です。※4回目にあたるかどうかは、直近12か月のあいだに上限額に達した月が3回以上あるかで判定します。
2026年8月に上限額が変わりました
高額療養費制度の上限額は、2026年8月1日の診療分から引き上げられました。2026年7月までに受けた診療は、これまでの金額で計算されます。この見直しは2段階で行われることが決まっており、2027年8月からもう一度引き上げられる予定です。
| 区分 | 2026年7月31日まで | 2026年8月1日〜2027年7月31日 |
|---|---|---|
| ア | 252,600円+(医療費−842,000円)×1% | 270,300円+(医療費−901,000円)×1% |
| イ | 167,400円+(医療費−558,000円)×1% | 179,100円+(医療費−597,000円)×1% |
| ウ | 80,100円+(医療費−267,000円)×1% | 85,800円+(医療費−286,000円)×1% |
| エ | 57,600円 | 61,500円 |
| オ | 35,400円 | 36,900円 |
※当院の保険診療は2026年12月1日開始予定のため、当院で受けていただく診療は右側(2026年8月1日〜2027年7月31日)の金額で計算されます。
よくあるご質問
Q. 高額療養費制度は、だれでも使えますか?
健康保険に加入している方であれば、年齢や収入にかかわらず対象になります。ただし、1か月に払った額が上限額を超えていない場合は払い戻しはありません。上限額は収入によって異なります。
Q. 手続きはむずかしいですか?
マイナンバーカードを健康保険証として使える状態にしていれば、受付の機械で「限度額情報の提供に同意する」を選ぶだけです。事前の申請は必要ありません。マイナ保険証をお持ちでない方は、加入している健康保険に限度額適用認定証を申請してください。
Q. あとから申請する場合、いつ戻ってきますか?
加入している健康保険に申請してから、払い戻しまでおおむね3か月ほどかかるのが一般的です。申請できる期間は診療を受けた月の翌月1日から2年以内です。正確な時期は加入先の健康保険にご確認ください。
Q. 差額ベッド代や食事代も対象になりますか?
いいえ。差額ベッド代・入院中の食事代・診断書などの文書料は高額療養費の対象外です。保険がきかない自費の診療も対象になりません。
Q. 同じ月に別の病院にもかかった場合はどうなりますか?
69歳以下の方は、1つの医療機関ごとに21,000円以上の自己負担があるものを合算できます。70歳以上の方は金額にかかわらず合算できます。くわしくは加入先の健康保険にご確認ください。
Q. 1年間に何度も手術や治療を受けた場合は?
直近12か月のあいだに3回以上上限額に達した場合、4回目からは上限額がさらに下がります。これを多数回該当といい、区分ウ・エでは44,400円になります。
参考:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」/同「令和8年8月・令和9年8月からの高額療養費制度の見直しの内容について」/同「後期高齢者の窓口負担割合の変更等(令和3年法律改正について)」/公益財団法人 生命保険文化センター「病気やケガをしたときの自己負担は?」/金融広報中央委員会 知るぽると「公的医療保険の高額療養費制度って何?」
公開:2026年8月13日 / 当院は開設準備中です(2026年11月開院・2026年12月1日保険診療開始予定)。