鼠径ヘルニア(脱腸)
鼠径ヘルニア(脱腸)は、足の付け根の腹壁のすき間から、腸などが飛び出す病気です。ふくらみや違和感がある方、手術を検討している方に、診察・治療・生活への復帰を図と表でご案内します。12
急いで受診が必要な症状
夜間・休日も、通常の予約を待たずに受診してください。
戻らないふくらみ、強い痛み、吐き気などがある場合は、通常の予約を待たず救急外来を受診してください。
まず知っておきたい4つのこと
2026年12月開設・2027年1月5日 保険診療開始予定。診療内容・金額は開院後の予定・見込みです。
当院で鼠径ヘルニアの日帰り手術を受ける場合(予定)
- 手術の方法
腹腔鏡(小さなカメラ)を使うTAPP法を主術式とし、全身麻酔で行う予定です。麻酔は麻酔科専門医が担当します。
術式の詳細- 費用(保険診療の場合)
3割負担で約11万〜13万円(他院公表額に基づく概算・高額療養費制度適用前)。当院の確定料金ではありません。
費用の内訳- 来院の回数
術前の診察・検査で1回、手術当日に1回の計2回を基本とし、術後の経過確認はオンライン診療で行う予定です(創部の状態により来院をお願いすることがあります)。
当日の流れ- 診療時間
火〜土 10:00〜17:00(完全予約制・日曜と月曜は休診)。手術日は診察のうえで調整します。
診療時間・休診日- アクセス
JR中央線・京王井の頭線 吉祥寺駅(アトレ本館西口)から徒歩2分。三鷹から2分、荻窪から3分、国分寺から11分、新宿から13分、渋谷から17分、立川から24分です(乗換案内の最短・2026年10月時点・時間帯により異なります)。
地図・道順


いま困っていることは、手術でどうなりますか
症状チェックの項目と、診察でよく聞かれる「運動」「性生活」「仕事」の困りごとに、順番に答えます。「文献の数」は手術後に残る・起こる頻度で、当院の実績ではありません。緑の枠=文献の数値 金の枠=当院の予定(開院後の運用)
症状:足の付け根のふくらみ / 力むと出る・横になると消える / 徐々に大きくなった
ふくらみは、手術でどうなりますか
ふくらみの正体は、腹壁のすき間から腸などが袋状に押し出されたものです。手術では袋をおなかの中へ戻し、すき間をメッシュで内側から補強します。原因のすき間がふさがるので、立ったり力んだりしてもふくらみが出てこない状態を目指します。
加えて、手術のあとにヘルニアがあった場所に水(体液)がたまり、ふくらみとして触れることがあります(漿液腫〔しょうえきしゅ〕・1,000人中15人25)。これは再発ではなく、何もしなくても自然に吸収される可能性が極めて高く、多くは数週間〜数か月で落ち着きます25。
- 手術後にヘルニアが再発する頻度(TAPP法・追跡中央値52か月)25
- 1.3%
- =1,000人に約13人。鼠径部切開メッシュ法1.2%と差なし。別の集計(コクランレビュー2024)では約1.2%23
- 100人中 約1人
水がたまったふくらみは見た目だけでは再発と区別しにくいため、術後診察で確認します。針で抜く処置は感染の入口になりうるので、原則として行わず経過を見ます予定。急に大きくなる・硬い・赤い・痛むときはご連絡ください。
困りごと:鈍い痛み・違和感 / 長時間立つと重い / 運動を控えている
運動には、いつ・どこまで戻れますか
国際ガイドラインは「無理なくできるようになり次第、制限なし」としており1、文献上は早い復帰で再発や痛みが増えるという根拠はありません30。一方で、メッシュが周囲の組織になじむまでの期間を考え、当院は負荷の強い動作ほど余裕をもった目安で案内する予定です。
- 歩く・ストレッチ・家事など軽い活動 予定
- 翌日から、無理なく
- 湯船・温泉・プール 予定
- 術後1週間ごろから
- 重い物を持つ・力仕事 予定
- 2〜3週間
- ランニング・筋トレ・球技・水泳など強めの運動 予定
- 3〜4週間
- 体を強くひねる・跳ねる・ぶつかる競技(ゴルフのフルスイング・格闘技・コンタクトスポーツ) 予定
- 4週間以降
他院の公開Q&Aと文献では、どのくらいか
| 情報源 | 重い物・力仕事 | 強めの運動・スポーツ |
|---|---|---|
| 国内の日帰り手術クリニックの公開Q&A(7院・2026年10月 当院調べ) | 2週間〜2〜3週間が多い。「数週間以上」とする院も | 2週間程度が最多。「過度な筋トレは3週間以上」「1か月以内はひねる・跳ねる動作を避ける」「約1か月後」とする院も |
| 91研究の推奨を集計したレビュー(腹腔鏡手術)29 | 中央値14日(四分位範囲10〜28日) | 中央値12日(四分位範囲7〜23日) |
| 同・鼠径部切開メッシュ法29 | 中央値42日(14〜42日) | 中央値7日(0〜29日) |
| 腹腔鏡手術の回復期間の系統的レビュー(34試験 14,273人)30 | 「1〜2日の休養」を推奨。制限の少ない案内のほうが回復が早く、痛み・合併症・再発は増えなかった | |
| 国際ガイドライン HerniaSurge 20181 | 無理なくできるようになり次第、制限なし(推奨) | |
当院の目安は、この幅の中で負荷の強い動作ほど長めに取っています。文献は「短くてよい」側を示しており、長くすることで再発が減るという根拠があるわけではありません。実際の時期は痛みと術後の経過を見て診察で判断します。
- 運動に戻るときの妨げになる「長引く痛み」(3か月以上・臨床的に問題となるもの)1
- 10〜12%
- 腹腔鏡手術は鼠径部切開メッシュ法より長引く痛みが少ない(1,000人中226人→約100人少ない)25
- RR 0.56
目安は一律の禁止期間でも復帰の保証でもありません。痛みに応じて少しずつ負荷を上げ、目安を過ぎても運動時の痛みが続く場合は術後診察でご相談ください。
困りごと:性生活への影響が気になる(男性に多いご質問)
性生活には、いつから戻れますか。手術で影響は出ますか
鼠径管には精管と精巣の血管が通っており、その周囲を操作します。当院の案内では制限は設けていませんが、2週間程度は避けるのが望ましく、痛みのない範囲で再開していただく予定です。文献で分かっている数は次のとおりで、腹腔鏡に有利な報告と、結論が割れている項目の両方があります。
- 性生活の再開目安 予定
- 2週間程度
- 手術後の性交時の痛み(腹腔鏡TAPP / 鼠径部切開)28
- 11.3% / 19.3%
- 単一施設の後ろ向き比較。当院の実績ではありません
- 100人中 11人 / 19人
- 精巣の痛み(腹腔鏡 vs 切開)2526
- 結論が割れている
- 日本のガイドラインは腹腔鏡で多い(RR 2.81)、2025年のメタ解析(2,538例)では差なし
- 精巣萎縮・精巣炎が腹腔鏡で増えるか(30試験 12,022例)27
- 増えるという結果なし
- 頻度そのものは信頼できる数値が公表されていない(まれ、とされる)
片側の手術で妊よう性(子どもをつくる力)が問題になることは通常ありません。両側の手術を予定し、今後お子さんを希望される方は診察でお伝えください。性交時の痛みが続く場合は、そのままにせず受診してください。
不安:飛び出したまま戻らなくなること(嵌頓)が心配
嵌頓を起こしてからの手術と、いま計画して受ける手術は何が違いますか
嵌頓(かんとん:飛び出した腸が戻らなくなること)を起こしてからの手術は緊急手術になり、合併症の頻度が大きく上がると国際ガイドラインは記載しています1。計画して受ける手術(待機手術)は、全身状態を整え、日帰りの条件を確認したうえで行えます。
バーの長さは、緊急手術の値を基準(右端)にした相対的な長さです。出典:HerniaSurge 20181(無症状〜軽い症状の男性を対象とした研究の値)。嵌頓がいつ起こるかを予測する数値ではありません。
戻らないふくらみ・強い痛み・吐き気があるときは、予約を待たず救急外来を受診してください。
困りごと:仕事を休めない / 重いものを扱う仕事
仕事には、いつから戻れますか
仕事の内容と痛みの程度で判断します。当院では術後の状態がよければ、デスクワークも立ち仕事も翌日からの復帰を検討できる方針で案内する予定です。重い物を扱う作業は上の「運動」の目安(2〜3週間)に準じます。
- 痛みが和らいでいくことが多い時期 予定
- 術後3〜4日目以降
- デスクワーク・立ち仕事 予定
- 状態がよければ翌日から検討
- 術後の診察 予定
- 通常1回
「翌日から仕事に戻れる」ことを約束する数値ではありません。復帰の時期は痛み・仕事内容・術後の経過で異なり、診察で判断します。
鼠径ヘルニアの症状と、受診の目安
こんな症状ありませんか?あてはまるものをチェックしてみてください
- 足の付け根にふくらみがある
- 力むと出る・横になると消える
- 鈍い痛みや違和感がある
- ふくらみが徐々に大きくなった
- 長時間立つと重い感じがする
なりやすい人
40歳以上の男性
加齢で腹壁が弱くなりやすい
重いものを持つ方
おなかに強い力がかかる
咳・便秘がつづく方
おなかに力がかかり続ける
太っている方
おなかへの負担が大きい
ヘルニアの家族歴がある方
体質が似ていることがある
図で見る、正常な状態とヘルニアの違い
次の図は、それぞれの状態を示しています。すべての方がこの順に進行するわけではありません。
診察・検査はどのように行いますか?
まず問診と身体診察で確認し、必要に応じて超音波検査などを組み合わせます。112
仰向けで確認
横になった姿勢で、医師が足の付け根を確認します。
立った姿勢で確認
姿勢によってふくらみが変わるかを確認します。
必要に応じて軽く力む
医師の指示で咳や軽いいきみを行い、ふくらみの変化を確認します。
診察の順序・検査内容は症状により異なります。診察の様子を簡略化した図です。強い痛みがあるときに、自分で無理に押したり力んだりしないでください。
画像検査・診察時の配慮について
診察だけで判断が難しい場合や、別の病気が疑われる場合は、超音波検査を行います。必要に応じて、CT・MRIなども検討します。1
足の付け根の診察に不安や抵抗がある方は、診察前にお知らせください。露出を必要な範囲にとどめるなど、プライバシーに配慮して診察する予定です。
いつ手術を考えるべきですか?
経過観察を相談
症状がない、または軽い男性では、診察のうえで経過観察が選択肢になることがあります。1
手術を相談
痛み・生活への支障・ふくらみの変化を、仕事や家庭の予定と一緒に医師へ伝えましょう。
急いで受診
戻らないふくらみ、強い痛みや吐き気があるときは救急外来へ。通常の予約を待たないでください。12
女性の鼠径部ヘルニアは、男性の経過観察のデータをそのまま当てはめられません。女性の方の注意点をご覧ください。1
手術へ切り替えた割合の推定値
Fitzgibbonsら(2013)。経過観察群の男性254人、最長11.5年の追跡。女性や症状の強い方に当てはめる数値ではありません。緊急手術の確率や、当院の実績でもありません。11
日帰り手術の適応となる条件
当院で日帰り手術をお受けいただけるかどうかは、病気の状態だけで決めるものではありません。全身の状態と帰宅後の環境もあわせて判断する予定です。年齢だけで一律に判断することはありません。麻酔科専門医が手術前に評価します。日帰りが適切でないと判断した場合は、入院設備のある医療機関をご紹介します。
診察・術前検査で確認すること
病気の状態
鼠径ヘルニアで確認する条件
- 戻らないふくらみ・強い痛み・吐き気があるときは、嵌頓(かんとん:飛び出た腸が戻らなくなる状態)が疑われます。この場合は、予定を立てて行う日帰り手術の対象ではありません。救急外来を受診してください。
- 左右両側のヘルニアも日帰り手術の対象となることがあります。診察・検査で適応を判断します。
- 女性では大腿ヘルニアの合併に注意が必要です。大腿ヘルニアは嵌頓を起こしやすい性質があります。
- 当院は成人の方を対象としています。小児(お子さま)の鼠径ヘルニアは診療の対象外です。
- 「日帰りか入院か」と「腹腔鏡か切開法か」は別の観点で判断します。術式は症状・既往歴・全身状態などで選びます。
- 病気の状態:ヘルニアの大きさ・左右・嵌頓(かんとん:飛び出た腸が戻らなくなる状態)の有無(詳しくは上の「鼠径ヘルニアで確認する条件」)
持病・薬
- 心臓・肺などの持病と、服用中のお薬(血液をサラサラにする薬を含む)
- これまでの麻酔・手術の経験と、そのときの体調
入院での手術をご案内する場合
- 心臓や血管(動脈)の病気、肺の病気や重い喘息などの併存疾患がある方
- 重い睡眠時無呼吸症候群や著しい肥満がある方
- 抗血栓薬(血液をサラサラにする薬)を休薬できない方
- 年齢や全身状態から、入院して全身麻酔の手術を受けるほうが適切と判断される方
帰宅後の支援
- 手術当日に帰宅して過ごせる環境があるか
帰宅後に必要な準備
- 手術当日は自動車・自転車・バイクの運転ができません(全身麻酔の影響が残るため)
- 帰宅後、少なくとも当日中はご家族などに付き添っていただくことをお勧めします
- 帰宅時にお渡しする緊急連絡先を確認し、いつでも連絡できるようにしておいてください
この病気に特有の考え方は、本ページの「日帰りと入院:術式とは別に考えます」の項もご覧ください。日帰り手術の全体像は日帰り手術とはで詳しくご案内しています。手術前後の準備は手術前後の生活と注意点をご覧ください。麻酔については日帰り手術の麻酔についてをご覧ください。最終的な適応は、初回診察・術前検査と麻酔科専門医の評価をふまえて判断します。
日帰りと入院:術式とは別に考えます
腹腔鏡手術は入院でも行われます。「日帰りか入院か」と「腹腔鏡か切開法か」は、別の観点で判断します。1
↔ 表は左右にスクロールできます。
| 確認すること | 日帰り手術 | 入院する手術 |
|---|---|---|
| 術後の過ごし方 | 帰宅条件を満たしてから自宅へ | 病院で経過を確認 |
| 術式 | 症状・既往歴・全身状態などで選ぶ | |
| 支援の確認 | 付き添い・帰宅手段・自宅での過ごし方 | 入院期間・退院後の支援 |
当院に入院設備はありません。日帰りが適切でない場合は、入院設備のある医療機関をご案内する方針です。
TAPP法とは:おなかの内側からメッシュで補強する手術
当院は、腹腔鏡(小さなカメラ)を使うTAPP法を主術式とする予定です。全身麻酔で行い、患者さんの状態に応じて術式を選びます。1
手術の流れを4つに分けて見る
カメラで確認する
全身麻酔のあと、カメラと器具を入れ、ヘルニアと周囲の状態を確認します。
腹膜を開いて、修復の準備をする
ヘルニアの袋を処理し、メッシュを置くためのスペースをつくります。
メッシュで補強する
腹膜前のスペースにメッシュ(補強用のシート)を広げ、弱くなった部分を覆います。
腹膜と傷を閉じる
メッシュを腹膜で覆うように閉じ、手術を終えます。
理解のためにまとめた一般的な手順です。実際の順序・固定方法などは状態により異なります。18
Lichtenstein法
体の表面側 ↓
(横筋筋膜など)
TAPP法・TEP法
体の表面側 ↓
(横筋筋膜など)
Lichtenstein法:足の付け根を切開します。メッシュは、外腹斜筋腱膜の内側で、鼠径管後壁の前面に置きます。13
TAPP法:おなかの内側(腹腔側)から腹膜を開きます。腹膜前スペースにメッシュを置いた後、腹膜を閉じます。8
TEP法:腹腔に入らず、腹膜の外側から同じ腹膜前スペースに到達します。8
鼠径部の層を単純化した図です。実際の厚さや形、精索・血管・神経などは省略しています。切開法には複数の方法があり、図はLichtenstein法の例です。術式は患者さんの状態に応じて選びます。
腹腔鏡手術(TAPP法・当院で行う予定の方法)
濃い部分が3mm、点線の部分は12mmまでの幅を表しています。実際の大きさは体格や術中の判断によって変わります。
傷の長さの合計
約0.9〜3.6cm(3〜12mm × 3か所)
※画面上の長さは実寸ではありません。図中の数値をご確認ください。※足の付け根を直接切開する方法(切開法)では、これより傷が大きくなります。体格や過去の手術歴、全身の状態によっては、切開法のほうが適している場合もあります。傷の大きさだけで術式が決まるわけではありません。※傷あとの治り方には個人差があります。
腹腔鏡手術では、おなかに3〜12mmの穴を3か所開けて行います。左右両方のヘルニアがある場合も、同じ3か所の傷から修復する方法があります。
TAPP法とTEP法の違いを見る
↔ 表は左右にスクロールできます。
| TAPP法(当院で行う予定の方法) | TEP法 | |
|---|---|---|
| アプローチ | おなかの中(腹腔内)から | 腹膜の外側のスペースから |
| 特徴 | おなかの中全体を見わたせるため、反対側にかくれたヘルニアも同時に確認できます | おなかの中に入らずに行えるため、おなかの中の臓器に触れずにすみます |
いずれも腹腔鏡でメッシュ修復を行う方法です。違うのは、到達する経路です。どちらが適するかは、患者さんの状態や施設の方針で判断します。8
手術後の経過とリスク
期待できる効果を、ひとつの数で
それぞれ「何人中何人」で読めるようにしています。数値はすべて公表されているガイドライン・研究の値で、当院の実績ではありません。
症状が軽い男性が経過観察を選んだ場合、10年までに手術を受けた割合
68%
100人中 68人は最終的に手術へ。経過観察群の男性254人・最長11.5年の追跡
Fitzgibbons 201311。女性や症状の強い方に当てはめる数値ではありません
強めの運動の再開目安(保守的な設定) 予定
3〜4週間
重い物・力仕事は2〜3週間、性生活は2週間程度。軽い活動は翌日から無理なく。手術時間は45〜90分、術後の診察は通常1回
当院の運用設計(開院後の予定)。文献値ではなく、当院の実績でもありません
起こりうることを、1,000人中何人かで並べる
日本ヘルニア学会ガイドライン2024が集計した、鼠径部切開メッシュ法1,000人あたりの頻度と、腹腔鏡手術にした場合の差です25。腹腔鏡で少なくなる項目と、多くなる項目の両方があります。
手術1,000人あたりに起こる人数
灰色=鼠径部切開メッシュ法(ガイドラインの集計値)/緑=腹腔鏡手術(集計値にガイドラインの差分を足した推定値)。表は左右にスクロールできます
表で見る(同じ数値)
| 起こりうること | 切開メッシュ法 /1,000人 | 腹腔鏡 /1,000人(推定) | ガイドラインの差 | 解析の規模 |
|---|---|---|---|---|
| 長引くいたみ(慢性疼痛) | 226 | 126 | 100人少ない(RR 0.56) | 1,070例/6試験 |
| 尿が出にくい(尿閉) | 58 | 58 | 差なし(RR 1.00) | 2,246例/8試験 |
| 術後すぐの強いいたみ | 37 | 26 | 11人少ない(RR 0.69) | 18,405例/6試験 |
| 漿液腫・血腫 | 15 | 10 | 5人少ない(差は不確実) | 18,715例/10試験 |
| 再発 | 9 | 12 | 3人多い(差は不確実) | 20,263例/12試験 |
| 手術部位の感染 | 4 | 1 | 3人少ない(RR 0.33) | 18,388例/8試験 |
| 血管の損傷 | 2 | 4 | 2人多い(RR 1.94) | 18,882例/3試験 |
| 臓器の損傷 | 1 | 1 | 差なし(RR 1.18) | 17,820例/3試験 |
「推定」は、ガイドラインの表にある「100人少ない」「3人多い」などの差分を集計値に足して当院が計算した値です。「差は不確実」とされた項目(漿液腫・血腫、再発)は統計的に差があるとは言えません。
いちばん多い「失敗例」は、長引く痛みです
再発より頻度が高いのは、3か月を超えて続く痛み(CPIP)です。出典によって数値が違って見えるのは定義の違いによります。
手術後3か月以上続く痛みの割合(100人中)
横軸は0〜30%(100人中30人)。幅のある項目は、薄い部分が下限まで、濃い部分が下限〜上限の範囲です。長引く痛みは時間とともに減っていくとされています1。3か月を過ぎても痛みが続く場合は、そのままにせず受診してください。
性生活に関わる数を、正直に並べる
男性の方から個別にご質問をいただくことが多い項目です。腹腔鏡に有利な報告はありますが、単一研究の値や結論が割れている項目も含めて、そのまま載せています。
手術のあと、いつ・何が起こりやすいか 予定
「正常な経過」と「連絡していただきたい症状」を、時間の順に並べています。期間は当院が予定している案内の目安で、個人差があります。
手術当日〜翌日
傷の痛み・肩の痛み・だるさ
鎮痛薬で対応。肩の痛みは腹腔鏡手術のあとに起こりやすく3日程度。排尿できたことを確認してから帰宅
3〜4日目以降
痛みが和らいでいくことが多い
日ごとに強くなる痛み・38℃以上の発熱・傷の赤みや膿はこの時期でも連絡
2〜3週間ごろ
性生活(2週間程度)・重い物・力仕事(2〜3週間)の再開目安
痛みのない範囲で段階的に。湯船・プールは1週間ごろから
〜3〜4週間
足の付け根の違和感・ふくらみ(漿液腫)
多くは自然に吸収。再発と見分けがつきにくいので術後診察で確認。急に大きくなる・硬い・痛むときは連絡
前提と範囲:この節は一般的な情報です。個別の適応・術式・時期は診察で決まります。頻度の数値は公表されているガイドライン・研究の値で、当院の実績ではありません。当院は開設準備中で、記載の運用は開院後の予定です。費用はこの節では扱わず、下の「手術費用:保険診療の場合」をご覧ください。
手術後に起こりやすいこと(多くは自然に落ち着きます)
次の症状は、手術後の正常な経過の一部として起こりうるものです。ヘルニアの再発を意味するものではありません。ただし、程度が強い、長引く、または「すぐ連絡していただく症状」に当てはまる場合は、ご連絡ください。
| 症状 | 症状の説明 | 当院の対応方針・連絡の目安(予定) |
|---|---|---|
| 足の付け根〜陰嚢の腫れ・皮下出血 | 手術した側の足の付け根や陰嚢が腫れたり、青紫色の皮下出血が出ることがあります。時間とともに黄色くなって消えていきます。 | 当院の対応方針(予定)術後の診察で確認する予定です。急に大きく腫れる・強い痛みを伴う場合はご連絡ください。 |
| 手術した部分に水がたまる(漿液腫) | ヘルニアがあった場所に体液がたまり、ふくらみが残ることがあります。再発と間違えやすい症状です。ただ、多くは数週間〜数か月で自然に吸収されます。 | 当院の対応方針(予定)術後診察で再発との区別をつけます。ふくらみが大きくなる・硬くなる・痛む場合はご連絡ください。 |
| 皮膚のしびれ・つっぱり感 | 手術した側の足の付け根や太ももの内側に、しびれや感覚の鈍さ、つっぱる感じが出ることがあります。多くは時間とともに軽くなります。 | 当院の対応方針(予定)術後の診察で経過を確認する予定です。3か月を超えて続く痛みは「手術に伴うリスク」の慢性疼痛として評価します。 |
| 肩や背中の張り・おなかの張り | おなかを膨らませたガスの影響で、肩や背中に張るような違和感、おなかの張りが出ることがあります。通常は1〜2日でおさまります。 | 当院の対応方針(予定)歩くこと・体を起こすことで早く抜けます。息苦しさを伴う場合はご連絡ください。 |
| のどの痛み・声のかすれ・吐き気 | 全身麻酔で気管に入れたチューブや麻酔薬の影響で起こります。多くは数日で軽快します。 | 当院の対応方針(予定)吐き気には、予防薬で対策する予定です。帰宅時には、吐き気止めもお渡しする予定です。水分がとれないほど吐き気が続く場合は、ご連絡ください。 |
手術に伴うリスク・合併症
TAPP法は、広く行われている標準的な手術です。ただし、リスクはゼロではありません。起こりうる主なものは、長引くいたみ(慢性疼痛)・尿が出にくくなること(尿閉)・漿液腫や血腫・再発・手術部位の感染・血管や臓器の損傷です。当院では術前診察でこれらを個別にご説明し、ご同意をいただいたうえで手術を行う方針です。
それぞれがどのくらいの頻度で起こるのかは、鼠径ヘルニア手術の合併症・失敗例のページにまとめました。日本ヘルニア学会ガイドライン2024と国際ガイドラインの数値、当院が予定している対策、術後にご連絡いただきたい症状も載せています。頻度の言葉の意味は「頻度の言葉の目安」をご覧ください。
全手術に共通するリスクと当院の備えは手術のリスク・合併症についてにまとめています。
全身麻酔に伴うリスク
麻酔は手術とは別のリスクを持つため、分けてご説明します。当院では、麻酔科専門医が全例を担当する予定です。それでも、次のことは起こりえます。
術後の吐き気・嘔吐が起こった割合(危険因子の数ごと)
危険因子は「女性」「乗り物酔いや術後嘔吐の経験」「たばこを吸わない」「手術のあとに強い鎮痛薬(オピオイド)を使う」の4つです。出典: Apfel CC, et al. Anesthesiology 1999(フィンランド・ドイツの成人 2,722人。予防薬の使い方は現在と異なります)10。当院の発生率ではありません。当院では危険因子に応じて予防薬を使う予定です。
頻度の言葉の目安(このページ共通)
- 非常に多い:10人に1人以上(10%以上)
- 多い:100人に1〜10人(1%以上10%未満)
- ときに:1,000人に1〜10人(0.1%以上1%未満)
- まれ:1万人に1〜10人(0.01%以上0.1%未満)
- ごくまれ:1万人に1人未満(0.01%未満)
当日帰宅できない場合
当院は無床診療所で、入院設備はありません。帰宅は、覚醒・歩行・飲水・排尿・痛みと吐き気のコントロール・成人の付き添いを確認してから決めます。
帰宅後にすぐ連絡していただく症状
- 痛みが日ごとに強くなる、鎮痛薬で抑えられない
- 38℃以上の発熱
- 傷からの出血や膿、傷の赤い腫れ
- 足の付け根や陰嚢が急に大きく腫れる
- 帰宅後に尿が出ない
- 繰り返す嘔吐、息苦しさ・胸の痛み、ふくらはぎの痛みや腫れ
術後に気になる症状がある場合は、時間帯を問わずLINEまたは電話でご連絡ください。緊急時は、術後の緊急対応用電話へお電話ください。看護師または医師が対応する予定です。判断に迷う場合もご連絡ください。
診察から手術日を決めるまで
診察・検査と麻酔の評価を行う予定です。そのうえで、お仕事やご家庭の予定も踏まえて、手術日を相談する予定です。
追加検査やお薬の調整が必要な場合は、手術日を改めて相談します。診察当日の手術日確定や翌日手術を保証するものではありません。
初診のご予約方法・持ち物・当院までの道順は初めての方へとアクセス・診療時間をご覧ください。
手術当日と、その前後の流れ
手術そのものの時間、手術室にいる時間、クリニックにいる時間の違いと、時刻の目安つきの流れは鼠径ヘルニア(脱腸)の手術時間と当日の流れにまとめています。
初診・準備
診察と検査をします
診察・検査の結果を踏まえて、手術日を相談する予定です。
手術当日
クリニックに来ます
来院時刻・食事・飲水・お薬については、術前にお渡しする個別の指示に従ってください。
手術の準備をします
手術用の服に着替え、点滴などの準備を行う予定です。
手術をします
手術室に入ってから手術が始まるまでに15〜25分(麻酔の導入と体位の準備)かかります。全身麻酔で手術します。術後の痛みは鎮痛薬などで対応する予定です。
休んで回復します
回復室で休み、覚醒・歩行・飲水・排尿・痛み・吐き気などを確認する予定です。
おうちに帰ります
成人の付き添いと帰宅手段を確認し、帰宅できる状態かを医師が判断する予定です。
帰宅後
様子をみせに来ます
術後の診察は、通常1回を予定しています。オンラインでの診察も選択肢となる予定です。受診の時期や診察方法は個別にご案内する予定です。術後の状態に応じて、追加の診察をご案内する場合があります。
手術が延期・中止になることがあります
- 術前検査で心臓・呼吸器・血液などに手術に影響する所見が見つかった場合
- 当日に発熱・咳・体調不良がある場合
- 絶飲食や常用薬(血をさらさらにする薬など)の指示が守られていない場合
- 付き添い・帰宅手段が確保できていない場合
延期は安全に手術を行うための判断です。日程を改めて調整します。
手術・麻酔・復帰・費用の目安
- 手術時間
- 約45〜90分来院から帰宅までは 約2.5〜3.5時間 が目安です。当日の流れを見る
- 麻酔
- 全身麻酔麻酔科専門医が担当する予定です。麻酔とリスクを見る
- 仕事への復帰
- 仕事の内容で異なります痛みと術後の状態を見て判断します。仕事・運動の目安を見る
- 費用
- 約11万〜13万円保険診療の場合・3割負担・高額療養費制度適用前。他院公表額を参考にした初診・通常術前検査込みの概算。術後再診・追加検査等は別途です。費用と条件を見る
2026年12月開設・2027年1月5日 保険診療開始予定。診療内容・金額は開院後の予定・見込みです。手術時間は目安で、当院の実績ではありません。日帰りの適応と帰宅時期は診察・検査・術後の状態で判断します。
仕事・日常生活への復帰の目安
以下は当院が予定する案内の目安です。復帰できる日は痛み・仕事内容・術後の経過で異なり、診察で個別に判断します。
↔ 表は左右にスクロールできます。
| お仕事の種類 | 復帰の目安 |
|---|---|
| デスクワーク | 痛み・仕事内容に合わせて個別に判断 |
| 体を使う仕事 | 状態がよければ翌日から復帰を検討 |
| 重いものを持つ仕事 | 状態がよければ翌日から復帰を検討。作業内容を相談 |
軽い活動から
歩行など、無理なくできる活動から徐々に再開します。
負担の大きい活動
重い荷物・激しい運動は、仕事内容や痛みを医師と確認して再開時期を決めます。
仕事への復帰は、痛みの程度や仕事内容に合わせて判断します。当院では、術後の状態がよければ、立ち仕事や力仕事でも翌日からの復帰を検討できる、という方針でご案内する予定です。痛みについては、術後3〜4日目以降にかなり和らぐことを目安としてご案内する予定です。ただし、経過には個人差があります。
運動・入浴・運転・飲酒など、項目ごとの「いつから」は 手術前後の生活と注意点|鼠径ヘルニア(TAPP法)の術後の目安 にまとめています。
国際ガイドラインでは、通常の活動は、無理なく行える状態になったら再開することが勧められています。上の時期は一律の禁止期間や復帰の保証ではありません。1
手術のあとの生活の目安(項目別)
以下は、鼠径ヘルニア(TAPP法)の手術のあとに「いつから何ができるか」をまとめた当院の目安です。当院の外科医が通常ご説明している内容をもとにしています。
明確な決まりがない項目も多くあります。痛みに応じて少しずつ負荷を上げていくなど、ご自身の体調に合わせて判断していただく部分もあります。
回復には個人差があります。実際の時期は、診察でお一人おひとりにお伝えします。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| シャワー | 翌日から(当日はお休みください) |
| 湯船・温泉・プール | 術後1週間ごろから(湯船・温泉・プールとも) |
| 重い物を持つ | 2〜3週間程度が目安です(負荷によって個人差があります) |
| 強めの運動(筋トレ・ランニング・球技・水泳) | 一律の日数は設けず個別にご案内します。目安は3〜4週間程度です。体を強くひねる・跳ねる・ぶつかる競技は4週間以降 |
| 自転車・車の運転 | 麻酔の翌日以降で、眠気の出る鎮痛薬を使っておらず、安全に急ブレーキが踏める状態になってから |
| 仕事(デスクワーク) | 状態がよければ翌日から検討できます |
| 痛みの経過 | 3〜4日目以降に和らいでいくことが多いです |
| 腫れ・違和感 | 足の付け根の違和感や軽い痛み、ふくらみ(漿液腫)は3〜4週間ほど続くことがあり、多くは自然に落ち着きます |
23項目の一覧(入浴・傷のケア・抜糸・痛み止め・家事・出張・飲酒・喫煙・便通・術後の診察など)は 手術前後の生活と注意点|鼠径ヘルニア(TAPP法)の術後の目安 にまとめています。
手術のあとの症状と、連絡の目安
| 症状 | 経過 |
|---|---|
| 肩の痛み | 腹腔鏡手術のあとに起こりやすく、3日程度続くことがあります |
| おなかの張り・便秘 | 麻酔と手術の影響で腸の動きが一時的に鈍ることがあります |
| おへその傷の痛み | 重い筋肉痛のような痛みで、日ごとに軽くなっていきます |
| 微熱 | 37.5℃以下であれば、術後の反応として様子をみて大丈夫です |
| 足の付け根の違和感・軽い痛み・ふくらみ | 漿液腫(体液のたまり)によるふくらみは多くが自然に吸収されます |
すぐに当院へ連絡していただきたい症状:嘔吐が続く/急な腹痛/38℃以上の発熱/傷の赤み・腫れ、膿が出る/尿が出ない。時間帯を問わずLINEまたは電話でご連絡ください。
手術費用:保険診療の場合
保険診療の場合・3割負担
約11万〜13万円
他院公表額を参考にした、初診・通常の術前検査込みの概算(高額療養費制度適用前)。術後再診・追加検査等は別途です。
他院の公表額を参考にした、保険診療の場合の概算です。当院の確定料金ではありません。当院は2027年1月5日に保険診療を開始する予定で、実際の費用は診療内容を確認してご案内します。実際の自己負担額は負担割合・検査・薬・加算・受診回数などで変わります。
↔ 表は左右にスクロールできます。
| 表示する範囲 | 初診・通常の術前検査+腹腔鏡手術。他院公表額に基づく参考概算(保険診療の場合・3割負担・高額療養費制度適用前)。 |
|---|---|
| 自己負担が変わる条件 | 保険の負担割合・診療内容・高額療養費制度の適用など |
| 別途かかる場合 | 術後再診・追加検査等。入院が必要となった場合の入院先の費用など |
費用の全体像は費用・保険のご案内、自己負担の上限については高額療養費制度をご覧ください(いずれも保険診療の場合の目安です)。
女性の鼠径ヘルニア
女性の症状・ヌック管水腫の詳しい説明
鼠径ヘルニアは男性に多く、男女比は約8:1です。数が少ないぶん、女性では見つかるまでに時間がかかることがあります。
女性では大腿ヘルニアの合併に注意が必要です
足の付け根のふくらみが、鼠径ヘルニアではなく大腿ヘルニアであることがあります。大腿ヘルニアは女性に多い病気です。
飛び出した腸が戻らなくなる嵌頓(かんとん)を起こしやすい性質があります。国際ガイドライン(HerniaSurge 2018)によると、女性の鼠径部ヘルニアでは大腿ヘルニアの合併が少なくありません。
術前の診察だけでは見つからないこともあります。そのため、腹膜前アプローチ(TAPP法・TEP法)が有用とされています1。
当院が主術式とする予定のTAPP法では、おなかの内側から鼠径部全体を観察します。そのため、鼠径ヘルニアと大腿ヘルニアの有無を同じ視野で確認できます。必要に応じて、同時に修復することもできます。
「婦人科の病気かもしれない」と迷う方へ
女性の鼠径部のふくらみは、小さく目立たないことがあります。「足の付け根が張る」「立っていると重い」といった違和感だけのこともあります。婦人科疾患やリンパ節の腫れとは区別がつきにくく、どこを受診すればよいか迷う方も少なくありません。診察では、仰向けと立った状態の両方で確認します。
ヌック管水腫(Nuck管水腫)— 鼠径ヘルニアと間違えやすい女性の病気
女性の足の付け根には、「ヌック管(Nuck管)」という構造があります。胎児期に、子宮を支える円靱帯(えんじんたい)に沿って、腹膜が袋状に伸びたものです。
男性の腹膜鞘状突起にあたる構造です。通常は生まれるまでに閉じますが、閉じずに残ることがあります。
残った袋に腸などが入り込んだものを、間接鼠径ヘルニアと呼びます。袋の中に液体がたまったものは、ヌック管水腫(ヌック管嚢腫)と呼びます。つまり、鼠径ヘルニアと同じ成り立ちの病気です1416。
症状は、足の付け根から大陰唇にかけてのふくらみです。ふくらみはやわらかく、押しても引っ込みません。
痛みは軽いことが多く、ふくらみ以外の症状がないまま見つかることもあります。5歳未満の女児に多い病気ですが、成人でもみられます。
まれな病気のため、鼠径ヘルニアやリンパ節の腫れと診断されていることが少なくありません14。成人例の文献集計(16例)では右側が13例と多く報告されています15。
診断には超音波検査が有用です。袋の中身が液体だけか、腸が入っているか、おなかの中とつながっているかを区別できます16。必要に応じてCT・MRIを追加します。
成人のヌック管水腫では、間接鼠径ヘルニア(診察では分からない小さなものを含む)を合併していることが多いと報告されています。31例をまとめた2026年の報告があります。
腹膜の外側から到達する手術を行った例では、全例に間接鼠径ヘルニアの合併がありました。この報告では、水腫の摘出とメッシュによるヘルニア修復を同時に行うことが勧められています17。
治療は、症状や大きさに応じて手術で袋を摘出します。当院が主術式とする予定のTAPP法では、おなかの内側から鼠径部全体を観察します。
そのため、ヌック管水腫の摘出と鼠径ヘルニアの修復を、同じ手術で行う予定です。手術の方法は、診察と画像検査の結果で決めます。
水腫が大きい場合や診断が確定しない場合は、追加の検査や連携医療機関へのご紹介をご提案することがあります。
ご高齢の方:年齢以外にも確認することがあります
年齢だけではなく、持病・服用中のお薬・全身状態を確認し、治療方針を相談します。
持病と体力
心臓・呼吸器の病気、糖尿病、腎機能などを確認します。
服用中のお薬
お薬手帳をお持ちください。血液をさらさらにするお薬などを自己判断で中止しないでください。
帰宅後の環境
付き添いや帰宅手段を確認します。日帰りが適切でない場合は、入院設備のある医療機関をご案内する方針です。
予定を立てた治療について
高齢者の緊急手術では、予定を立てて行う手術より負担が大きくなることが報告されています。ただし、報告ごとに患者さんの状態や研究の条件が異なります。そのため、数値だけではご自身のリスクは判断できません。診察・検査のうえで、ご本人・ご家族と治療方針を相談します。9
日帰り手術を支える体制・方針
執刀
外科専門医が手術を担当する予定です。
適応と帰宅の判断
診察・検査と術後の状態を確認し、必要に応じて入院設備のある医療機関をご案内する方針です。
黒河内 喬範(外科専門医)の経歴・資格/高宮 達郎(麻酔科専門医)の経歴・資格/諏訪 勝仁(外科専門医・顧問)の経歴・資格
よくある質問
Q. 脱腸は手術した方がいいですか?放っておくとどうなりますか?
Q. 脱腸のふくらみが硬くなって戻りません。どうすればよいですか?
飛び出した腸が戻らなくなった状態を嵌頓(かんとん)といいます。ふくらみが硬い・押しても戻らない・強い痛みが続く・吐き気や嘔吐がある——このいずれかがあるときは、通常の予約を待たずに救急外来を受診してください。
時間が経つほど、飛び出した腸の血流が悪くなります。無理に押し戻さないでください。仰向けで膝を曲げて休むと、自然に戻ることもあります。ただし、戻った場合でも、その日のうちに医療機関にご相談ください。
Q. 嵌頓(かんとん)を起こした場合、どんな手術になりますか?
緊急手術になります。予定を立てて行う待機手術とは別の扱いです。
当院の日帰り手術の対象ではありません。腸の血流が戻らなければ、腸を切除することもあります。
国際ガイドラインでは、緊急手術は待機手術にくらべて合併症の頻度が高いと報告されています(数値は鼠径ヘルニア手術の合併症・失敗例のページにまとめています)。症状が軽いうちに予定を立てて手術を受けることが、嵌頓を避ける方法です。
Q. 脱腸(鼠径ヘルニア)の手術は何日くらい入院しますか?
鼠径ヘルニアの手術は、入院して行う方法と、入院せずに当日帰宅する日帰り手術の両方が行われています。入院日数は、医療機関や術式によって異なります。
入院での手術を検討される場合は、受診先にご確認ください。当院は、入院設備を持たない日帰り手術のクリニックです。
全身麻酔のもと腹腔鏡手術(TAPP法)を行い、術後の回復を院内で確認したうえで当日ご帰宅いただく方針です。日帰りが適切でないと判断した場合は、入院設備のある医療機関をご案内します。日帰りと入院の考え方をご覧ください。
Q. 脱腸の手術は危険ですか?日帰りでも大丈夫ですか?
どのような手術にも一定のリスクがあります。鼠径ヘルニアの手術で報告されている主な合併症は、出血、漿液腫(体液のたまり)、創部感染、慢性的な鼠径部の痛み、再発などです1。
そのうえで、鼠径ヘルニアを日帰りで手術することは、国際ガイドライン(HerniaSurge 2018)でも選択肢のひとつとして位置づけられています1。ただし、どなたにも適するわけではありません。
心臓や呼吸器の持病、服用中のお薬、手術当日にご自宅で過ごせる環境かどうかによっては、入院での手術のほうが適していると判断することがあります。当院では、麻酔科専門医が術前に全身状態を評価する方針です。
日帰りで行うことが適切でないと判断した場合は、入院設備のある医療機関へご紹介する方針です。
Q. 女性で、足の付け根にやわらかいふくらみがあり、押しても引っ込みません。鼠径ヘルニアですか?
鼠径ヘルニアのほかに、ヌック管水腫(Nuck管水腫)やリンパ節の腫れなどの可能性があります。ヌック管水腫は女性特有の病気で、腹膜の袋に液体がたまったものです。
押しても引っ込まない、やわらかいふくらみとして現れます。超音波検査などで、鼠径ヘルニアと区別します。
成人では、間接鼠径ヘルニアを合併していることが多くあります。そのため当院では、TAPP法で水腫の摘出とヘルニアの修復を同じ手術で行う予定です。詳しくはヌック管水腫の項をご覧ください。
Q. 子ども(小児)の鼠径ヘルニアも診てもらえますか?
当院は成人の方を対象としています。小児(お子さま)の鼠径ヘルニアは診療の対象外です。小児の鼠径ヘルニアは、生まれつき腹膜の一部が閉じずに残ることが原因です。腹壁がゆるんで起こる成人の鼠径ヘルニアとは、成り立ちが異なります。手術の方法も異なり、メッシュを使わない方法が選ばれます。小児外科のある医療機関へご相談ください。
Q. 手術したあと、また出ることはありますか?
2024年のコクランレビュー(複数の研究をまとめた報告)では、成人の鼠径ヘルニアに対するTAPP法(腹腔鏡手術の一つ)の再発割合は約1.2%と推定されています。23追跡期間は研究ごとに異なります。
この値が、個々の患者さんにそのまま当てはまるわけではありません。当院の実績ではありません。
当院では鼠径部全体を広くメッシュで覆う方法を採用し、再発リスクの低減に努める方針です。
Q. 手術後の足の付け根の違和感やふくらみは、いつ頃落ち着きますか?
Q. 手術のあと、痛いですか?
術後の傷の痛みや張りには、鎮痛薬などで対応する予定です。鼠径ヘルニア手術全体の報告では、生活に影響する慢性的な痛みが10〜12%、生活や仕事を強く妨げる痛みが0.5〜6%とされています。数値は術式や評価方法などで異なります。当院の実績ではありません。1痛みが長引く場合は診察で評価します。
Q. いつから仕事に戻れますか?
仕事への復帰は、痛みの程度や仕事内容に合わせて判断します。当院では、術後の状態がよければ、立ち仕事や力仕事でも翌日からの復帰を検討できる、とご案内する予定です。ただし、動作によって痛みが出ることがあります。無理をせず、作業量や勤務時間を調整してください。
痛みは術後3〜4日目以降にかなり和らぐことを目安にご案内する予定です。ただし、経過には個人差があります。重い物を持つ作業などがある場合は、具体的な仕事内容を診察時にお伝えください。
仕事・生活への復帰の目安もご覧ください。
Q. 脱腸(鼠径ヘルニア)の手術費用はいくらですか?
保険診療の場合の目安と条件は、手術費用の表をご覧ください。2027年1月5日の保険診療開始後の見込みを掲載しています。
Q. 保険は使えますか?
鼠径ヘルニアの手術は健康保険の対象です。当院は2027年1月5日に保険診療を開始する予定です。保険診療の場合の費用をご確認ください。
Q. 運動はいつからできますか?
鼠径ヘルニアの手術後は、痛みや体調に合わせて、歩行など無理なくできる活動から再開します。国際ガイドラインでは、通常の日常活動は、無理なく行えるようになり次第再開することが勧められています。1
ジョギング、筋力トレーニング、ゴルフなどは、運動の強さや術後の状態によって再開の目安が異なります。希望する運動を伺い、個別にご案内する予定です。痛みを我慢して続けず、負荷を調整してください。
仕事・日常生活への復帰もご覧ください。
Q. 左右両方のヘルニアも日帰りでできますか?
両側でも日帰り手術の対象となることがあります。診察・検査で適応を判断します。TAPP法は腹腔鏡を使用するため、同じ3箇所の小切開から両側のヘルニアを同時に修復できます。術後の回復期間は片側手術と大きく変わりません。
Q. TAPP法の手術時間はどのくらいですか?
手術そのものは約45〜90分が目安です。来院から帰宅までは、おおむね2時間半〜3時間半を見込んでいます。内訳と当日の時刻の目安は鼠径ヘルニア(脱腸)の手術時間と当日の流れにまとめています。当日の院内の流れは手術当日と、その前後の流れをご覧ください。
Q. 全身麻酔と聞くと不安です。
麻酔科専門医が術前評価・術中の全身管理・術後の回復確認を担当する予定です。全身麻酔のリスクをご覧いただき、不安な点は診察でご相談ください。
Q. 手術で入れたメッシュがあると、MRI検査は受けられなくなりますか?
鼠径ヘルニアの手術で使われるメッシュの多くはポリプロピレンなどの非金属素材で、MRI検査を受けられるのが一般的です。ただし検査の前に、使用した製品名と固定方法をご自身で把握し、検査先にお伝えいただくのが原則です。詳しくは鼠径ヘルニアのメッシュが入っていてもMRIは受けられる?で解説しています。
Q. 手術の傷跡は目立ちますか?
傷は3〜12mmが3か所です。時間の経過とともに目立ちにくくなっていくことが多いですが、経過には個人差があります。
診察で確認しておきたいこと
- 自分の場合、今手術するのが適しているか。様子を見る選択肢との違いは何か
- 自分の仕事・運動で、復帰の目安はいつごろか
- 自分の既往・常用薬(血をさらさらにする薬・糖尿病薬・前立腺の薬など)で、麻酔や手術に影響するものはあるか
- 当日帰宅できない場合はどうなるか。付き添い・帰宅手段は何が必要か
- 費用の目安と、高額療養費制度の対象になるか
- 術後に連絡する方法と、連絡すべき症状
このページを印刷してお持ちいただいても構いません。診察では同じ内容を紙の説明書でお渡しする予定です。
国内でも多くの方が手術を受けています
鼠径ヘルニアを含む「鼠径部ヘルニア」は、全国で多くの方が治療を受けている病気です。19
- 日本全国の鼠径部ヘルニア手術
- 年間約15万人が手術を受けると推計
- 手術を受ける方の年齢
- 約90%が15歳以上
- 手術を受ける方が多い年代
- 65〜84歳年齢別ではこの年代に多い
対象は鼠径ヘルニアと大腿ヘルニアを合わせた「鼠径部ヘルニア」です。手術の統計であり、年間の発症人数や、病気がある方全体の人数を示すものではありません。
出典:日本ヘルニア学会「成人の鼠径部ヘルニア」(2026年9月13日参照)。年間約15万人は学会掲載の概数です。年齢構成の図は2014年4月〜2024年3月の手術統計に基づきます。
図で見る、鼠径ヘルニア手術の変遷
手術方法の変化をまとめた図です。現在も複数の方法が使われ、患者さんの状態に合わせて選択します。1
主な術式の変化を整理しています。現在も複数の術式が用いられます。色に加えて「問題/改良された点/残った課題」のラベルを付けています。
Bassini法(組織を縫い合わせる)エドアルド・バッシーニ(イタリア)
確立した手術方法がなく、再発が避けられなかった。
弱くなった鼠径部の組織を、解剖の層に沿って縫い直す方法を確立。「どこをどう縫うか」が定まり、手術に再現性が生まれた。
本来離れている組織を引き寄せて縫うため、縫い目に常に張力がかかる。これが突っ張る痛みの原因になった。張力そのものが再発も招いた。
Lichtenstein法(メッシュで覆う)アーヴィング・リヒテンシュタイン ら(アメリカ)
縫い目の張力が、痛みと再発の主な原因になっていた。
引っ張って縫うのをやめ、メッシュで覆って補強する「tension-free(組織を強く引き寄せずに補強する方法)」へ。組織にかかる張力を減らす工夫が取り入れられた。
足の付け根を直接切開するため傷が大きい。両側なら切開は2か所。切開部の神経に触れることが、術後に続く違和感の要因になり得た。
腹腔鏡手術(TAPP法・TEP法)ガー(1982年・考え方の提唱)/アレギ(1992年・TAPP法)ほか
切開が大きく、両側では2か所必要。切開部の神経に触れてしまう。
外から切り開かず、おなかの内側から穴をふさぐ発想へ。①傷が3つの小さな穴で済む ②両側を同じ傷から治せる ③鼠径部の切開を避ける、という特徴がある。神経への影響がなくなるわけではない。
おなかを膨らませて操作するため全身麻酔が必要。体格や過去の手術歴によっては、切開法のほうが適している場合もある。
当院ではこの第3世代のTAPP法を主術式とする予定です。全身麻酔は麻酔科専門医が担当します。
歴史と術式の詳しい説明を読む
鼠径ヘルニアの手術には、140年近い歴史があります。その歴史は「再発をどう防ぐか」と「術後の痛みをどう減らすか」という2つの課題を、一つずつ解いてきた過程でもあります。いま当院が行う予定のTAPP法がなぜこの形になったのか、順を追ってご説明します。
第1世代(1887年〜)Bassini法 — 「決まったやり方」が生まれた
それ以前のヘルニア手術には確立した方法がなく、再発が避けられませんでした。1887年、イタリアの外科医バッシーニが、弱くなった鼠径部の組織を解剖の層に沿って縫い直す系統的な方法を発表します6。以後100年近く、ヘルニア手術の基本形となりました。
改良された点:「どこをどう縫うか」が定まり、手術の再現性が生まれました。
残った課題:本来離れている自分の組織を引き寄せて縫うため、縫い目に常に張力(引っ張る力)がかかります。これが、突っ張るような痛みの原因になりました。さらに、張力そのものが縫い目をゆるめ、再発を招く要因にもなりました。
第2世代(1989年〜)Lichtenstein法 — 「張力」をなくした
1989年、リヒテンシュタインらは「ヘルニア手術が失敗する主な原因は、本来は接していない組織を張力をかけて縫い合わせることにある」と指摘しました。そのうえで、引っ張って縫うのをやめて、メッシュ(人工の膜)で覆って補強する方法を発表しました7。この方法は、張力をかけないという意味で「tension-free(テンションフリー)」と呼ばれます。
改良された点:第1世代の弱点だった張力がなくなり、組織にかかる張力を減らす工夫が取り入れられました。
残った課題:この方法では、足の付け根を直接切開して患部に到達します。そのため、傷がある程度の大きさになります。左右両方にヘルニアがある場合は、切開が2か所必要です。また、切開する部分には感覚を伝える神経が通っています。この神経に触れることが、術後に続く違和感の原因になる可能性がありました。
第3世代(1990年代〜)腹腔鏡手術 — 「傷」と「神経」を避けた
1982年にガーらが腹腔鏡を使う考え方を報告しました。1992年には、アレギらがTAPP法(経腹的腹膜前修復法)の初期報告を行いました。また、おなかの中を通らずに修復するTEP法(完全腹膜外修復法)も、1990年代前半に複数の術者から相次いで報告されています8。
改良された点:外から切り開くのではなく、おなかの内側からヘルニアの穴をふさぐ発想に変わりました。これにより、①傷が3つの小さな穴で済む ②左右両方のヘルニアを同じ傷から治せる ③鼠径部の切開を避ける、という特徴があります。神経への影響や術後の痛みがなくなるわけではありません。
国際的な診療ガイドラインでも、腹腔鏡による修復は主要な選択肢の一つとして位置づけられています1。ただし、すべての方に腹腔鏡が適しているわけではありません。体格や過去の手術歴、全身の状態によっては切開法のほうが適している場合もあります。
当院がTAPP法を主術式とする理由と全身麻酔の考え方は、このページの「当院の日帰り手術を支える体制・方針」で詳しくご説明しています。手術に伴うリスクについては、日帰り手術のリスクと合併症もあわせてご覧ください。頻度の数値は、鼠径ヘルニア手術の合併症・失敗例にまとめています。
参考文献
参考文献一覧を開く
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- Ding Y, Gong J, Zhang H, Li J. Comparison of sexual function following Lichtenstein versus laparoscopic mesh repair in primary inguinal hernias, the meta-analysis of randomized controlled trials. Surg Endosc. 2025;39(9):5558-5568. (doi:10.1007/s00464-025-12003-w)
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当院は2026年12月開設・2027年1月5日 保険診療開始予定です。手術に関するご相談・ご予約の受付開始時期は、下記の受付状況ページでご案内します。
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