腹腔鏡手術とは
腹腔鏡手術(ふくくうきょうしゅじゅつ、ラパロスコピー)とは、お腹の小さな切開から行う外科手術です。腹部に数mm〜2cm程度の小切開を2〜4箇所開けます。
そこからカメラ(腹腔鏡)と細長い手術器具を入れて手術します。切開の大きさと数は、疾患や術式によって異なります。
1987年、フランスのPhilippe Mouretが世界で初めて腹腔鏡下胆嚢摘出術を行いました。現在では、消化器外科・婦人科・泌尿器科の多くの術式で、標準的な方法として確立されています。
日本では年間約25万件(2020年・日本内視鏡外科学会調べ)の腹腔鏡手術が行われています。外科手術の中心となる技術です。
当院(吉祥寺日帰り手術クリニック)では、腹腔鏡手術を基本の術式として採用し、日帰りでの手術を提供する予定です。
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この手術のポイント
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 切開サイズ | 数mm〜2cm × 2〜4箇所(疾患・術式により異なります/合計2〜4cm程度) |
| 麻酔 | 全身麻酔(麻酔科専門医が管理) |
| 入院 | 不要(術後約60分で帰宅) |
| 社会復帰 | デスクワーク翌日〜数日(術式により異なる) |
| 特徴 | 拡大視野、精密な操作、低侵襲 |
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腹腔鏡手術の仕組み
気腹(きふく)―腹腔を広げる
腹腔鏡手術では、まず腹壁に小さな針を刺します。そこから炭酸ガス(CO2)を腹腔内に注入し、腹腔(お腹の中の空間)を風船のように膨らませます(気腹)。
腹腔内の圧力は8〜12mmHgに保ちます。これで臓器と腹壁のあいだに作業空間ができ、器具を操作できるようになります。
手術が終わると、CO2は自然に体外へ出ていきます。なお、術後に一時的に肩や首が痛むことがあります。これは横隔膜への刺激によるものです。
カメラ(腹腔鏡)と手術器具
腹部の小切開にトロカール(管状の器具)を入れます。この管を通して、腹腔鏡と、鉗子(つかむ器具)・剪刀(はさみ)・電気メスなどの手術器具を入れます。腹腔鏡の先端には、高解像度の小型カメラが付いています。お腹の中の映像は、外部のモニターにリアルタイムで映ります。術者はモニターの映像を見ながら手術器具を操作します。
拡大されたモニター映像での手術
腹腔鏡カメラは、お腹の中を肉眼の4〜8倍に拡大して映します。血管・神経・臓器の境目がはっきり見えます。そのため、精密な剥離や縫合ができます。

カメラ:お腹の中を撮影し、モニターに映します。
手術器具:別の入口から入れて操作します。
図を押すと拡大できます。参考:NHS:腹腔鏡手術
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開腹手術との比較
| 比較項目 | 腹腔鏡手術 | 開腹手術 |
|---|---|---|
| 切開サイズ | 数mm〜2cm × 2〜4箇所 | 5〜20cm × 1箇所 |
| 術後の痛み | 軽度(鎮痛剤で管理可) | 中〜強度 |
| 回復期間 | 数日〜1週間 | 1〜4週間 |
| 整容性(傷跡) | 目立ちにくい | 線状瘢痕が残る |
| 視野の広さ | 拡大視野(4〜8倍) | 直視(等倍) |
| 手術時間 | やや長い場合がある | 術式による |
| 出血量 | 少ない傾向 | 多い傾向 |
| 日帰り適応 | 適している | 困難 |
| 感染リスク | 低い傾向 | やや高い傾向 |
| 全身麻酔の必要性 | 必要 | 術式により異なる |
| 適応疾患の幅 | やや限られる | 幅広い |
日本内視鏡外科学会の第15回アンケート調査(2020年)によると、腹腔鏡手術は消化器外科の領域で、術後合併症の減少と入院日数の短縮に役立っています。同調査によると、多くの疾患で開腹手術に代わる標準の術式になっています。
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腹腔鏡手術のメリット
1. 傷が小さい
切開は数mm〜2cm程度と小さく、皮膚・筋肉・腹壁へのダメージは最小限です。開腹手術に比べて、術後の傷跡が目立ちにくくなります。見た目の面(整容性)でも優れています。
2. 術後の痛みが少ない
筋肉を切る量が少ないため、術後の痛みは開腹手術と比べて有意に軽くなります。多くの方は、市販の鎮痛剤を補助的に使う程度で痛みを管理できます。
3. 入院期間の短縮・日帰り手術が可能
身体への負担(侵襲)が小さいため、回復が早くなります。適切な術前・術後の管理のもとでは、日帰り手術(当日帰宅)が可能です。入院にともなう費用・精神的ストレス・生活への影響を大幅に減らせます。
4. 社会復帰が早い
デスクワークなら、術翌日から復帰できるケースも多くあります。体を使う仕事でも、数日〜1週間程度で通常業務に戻れます。仕事をしている方や育児中の方には、特に大きなメリットがあります。
5. 拡大視野による精密な手術
腹腔鏡カメラは、拡大した高解像度の映像を映します。そのため、肉眼では見えにくい細い血管や神経を確認しながら手術できます。精密に操作できるので、重要な臓器を傷つけるリスクを減らせます。
6. 感染リスクの低減
切開が小さいため、お腹の中が外の空気にさらされる量が少なくなります。そのため、傷の感染(創感染)やお腹の中の感染(腹腔内感染)のリスクが、開腹手術に比べて低くなります。
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腹腔鏡手術の注意点・限界
全身麻酔が必要
腹腔鏡手術では気腹を行うため、全身麻酔が必須です。局所麻酔や脊椎麻酔では行えません。術前に全身の状態を評価します。麻酔のリスクが高いと判断された場合は、手術の適応(手術を行うかどうか)を検討します。当院では、麻酔科専門医が術前評価から術中管理・術後の覚醒まで一貫して担当します。
開腹手術への移行の可能性
次のような場合は、安全のために開腹手術へ移行(コンバージョン)することがあります。お腹の中の癒着が強い場合、出血量が多い場合、手術中に予期しない状態の変化が起きた場合などです。術前にこの可能性をお伝えし、患者さんの同意を得たうえで手術を行います。
術者の技量への依存
腹腔鏡手術では、特殊な器具をモニターの映像を見ながら操作します。そのため、開腹手術とは異なるトレーニングが必要です。術者の技量が、手術の結果に影響する面があります。当院では、手術の執刀は必ず外科専門医が担当します。
CO2気腹に伴う副作用
術後に、横隔膜への刺激による肩・首の痛みや、お腹の張りが数日間続くことがあります。通常は自然に治まります。症状が強い場合は受診してください。
深部視野・触覚の制限
腹腔鏡手術では、モニターに映る2次元(または3次元)の映像を見ながら操作します。そのため、開腹手術のように直接触れて得られる感覚(触覚情報)が限られます。術者は、この制限を技術と経験で補います。
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当院で行う腹腔鏡手術
当院では以下の疾患に対して腹腔鏡手術を行う予定です。各疾患ページで詳細をご確認ください。
| 疾患名 | 術式 | 手術時間の目安 |
|---|---|---|
| 鼠径ヘルニア(脱腸) | TAPP法(腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術) | 45〜90分 |
| 腹壁ヘルニア | 腹腔鏡下腹壁ヘルニア修復術 | 45〜90分 |
| 虫垂炎 | 腹腔鏡下虫垂切除術 | 30〜60分 |
| 中心静脈ポート(CVポート) | 腹腔鏡補助下ポート留置術 | 30〜60分 |
対応疾患については今後も順次追加予定です。受診時に詳しくご相談ください。
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当院の設備
腹腔鏡システム
手術室
手術室を2室完備し、安全かつ効率的に手術を行える体制を整えています。各手術室には生体監視装置(心電図・血圧・酸素飽和度・カプノグラム)を備えています。麻酔科専門医が、手術中の全身管理を担当します。
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よくある質問
Q1. 腹腔鏡手術は保険適用ですか?
はい、腹腔鏡手術の多くは健康保険の対象です。鼠径ヘルニア・虫垂炎など、当院で行う疾患はいずれも保険診療で対応する予定です。3割負担での目安は疾患ごとに異なり、5〜15万円程度です。詳しくは各疾患ページまたは診察時にご確認ください。
Q2. 腹腔鏡手術は誰でも受けられますか?
基本的な条件は、全身麻酔に耐えられる状態であること、お腹の中の癒着が著しくないことなどです。重い心臓病・肺の病気・血液凝固障害(血が止まりにくい状態)がある方は、術前評価で適応を慎重に判断します。過去にお腹の手術を受けた方は、癒着の程度によって適応を検討します。詳しくは初診時にご相談ください。
Q3. 開腹手術の経験がある場合でも腹腔鏡手術を受けられますか?
過去の開腹手術でお腹の中の癒着が強い場合、腹腔鏡手術が難しいこともあります。ただし、判断は癒着の程度・部位・前回手術からの期間によって異なります。担当の外科医が、術前の問診と画像評価をもとに、適応を個別に判断いたします。まずはご相談ください。
Q4. 腹腔鏡手術の後、傷跡は残りますか?
数mm〜2cm程度の小さな傷が2〜4箇所残ります。ほとんどの場合、数ヶ月〜1年程度で目立たなくなります。開腹手術の10〜20cmの線状の傷跡(瘢痕)と比べると、見た目の面で大きく優れています。ただし、ケロイド体質の方は傷跡が目立ちやすい場合があります。
Q5. 腹腔鏡手術後に再度手術が必要になることはありますか?
腹腔鏡手術は術後合併症の発生率が低く、再手術が必要になるケースは少数です。ただし、ヘルニアの再発・術後出血・感染などが起きた場合は、再手術が必要になることがあります。術後のフォローアップで異常を早く見つけ、必要な対処をすぐに行える体制を整えています。
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参考文献
- 日本内視鏡外科学会. 内視鏡外科手術に関するアンケート調査 第15回集計結果報告. *日本内視鏡外科学会雑誌*. 2020;25(6):587-685.
- Mouret P. How I developed laparoscopic cholecystectomy. *Ann Acad Med Singapore*. 1996;25(5):744-747.
- 日本外科学会. 外科領域における腹腔鏡手術の安全管理に関するガイドライン. 2022.
- Vettoretto N, Cirocchi R, Randolph J, et al. Laparoscopic cecectomy for right colectomy. *Cochrane Database Syst Rev*. 2019. doi:10.1002/14651858
- 厚生労働省. 医療施設調査. 2022年. https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/79-1.html
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腹腔鏡手術についてご不明な点・ご不安な点は、お気軽にご相談ください。外科専門医と麻酔科専門医が連携し、安全な日帰り手術を提供いたします。
ご相談・ご予約
当院は2026年12月開設・2027年1月5日 保険診療開始予定です。手術に関するご相談・ご予約の受付開始時期は、下記の受付状況ページでご案内します。