慢性副鼻腔炎(蓄膿症)とは
当院で予定している手術と対象
吉祥寺日帰り手術クリニック(2026年12月開設)で、「内視鏡下鼻・副鼻腔手術(ESS)」を日帰りで行う予定です。対象は、慢性副鼻腔炎(蓄膿症)と診断され、薬による治療を十分に行っても症状が残っている方です。鼻の手術を専門とする耳鼻咽喉科専門医が執刀します。全身麻酔は、麻酔科専門医が管理します。
高熱・強い顔の痛み・目のまわりの腫れがある急性期の方は、当院の対象ではありません。まず、入院設備のある医療機関を受診してください。
副鼻腔炎(ふくびくうえん)は、鼻の周囲にある空洞「副鼻腔」に炎症が起こる病気です。一般には「膿がたまる」イメージから蓄膿症とも呼ばれてきました。
副鼻腔は、上顎洞(ほほの奥)・前頭洞(額)・篩骨洞(両目の間)・蝶形骨洞(鼻の最奥)の4対からなります。それぞれ、細い「自然口」という出入り口で鼻腔とつながっています。
この自然口が炎症で腫れてふさがると、空気の入れかえ(換気)と分泌物の排出(排液)が滞ります。すると、炎症が長引く悪循環に入ります。
症状が12週以上続くものを、慢性鼻副鼻腔炎と呼びます(欧州のEPOS 2020)3。
健康な副鼻腔副鼻腔炎前頭洞(額)篩骨洞(目の間)上顎洞(ほほ)当院は2026年12月開設・2027年1月5日保険診療開始の予定です。上記はいずれも開始後の見込みで、手術の範囲(どの副鼻腔をどこまで開けるか)と経過によって異なります。
この手術の対象になるのはどんな方?(当院の適応)
当院は、成人(18歳以上)の方の日帰り手術を行うクリニックです。副鼻腔炎で対象になるのは、薬による治療を十分に行っても改善しない慢性鼻副鼻腔炎の方です。
そのうえで、内視鏡下鼻・副鼻腔手術(ESS)の適応(手術が適している状態)と判断された方が対象になります。18歳未満(小児)の手術は行っておりません。また、高熱や強い顔面の痛みを伴う急性期の方は、当院ではなく、まず入院設備のある医療機関を受診してください。以下は、国内外の診療ガイドラインに沿った当院の考え方です。
◎ 当院での日帰り手術をお勧めできる方
- 18歳以上の方
- 鼻づまり・膿のような鼻水・後鼻漏・においの低下などが12週間以上続いている(慢性鼻副鼻腔炎)
- 鼻噴霧用ステロイド・鼻洗浄・マクロライド少量長期投与などの薬物治療を3か月程度以上続けても症状が残っている
- 鼻内視鏡検査とCTで副鼻腔の炎症が確認され、手術で改善が見込めると判断された
- 手術当日に付き添いの方が確保でき、帰宅後に安静を保てる環境がある
△ まず診察でご相談が必要な方
- 好酸球性副鼻腔炎(指定難病306)が疑われる、または診断されている方 — 手術範囲が広くなりやすく、術後も長期の薬物管理や生物学的製剤が必要になることがあります
- 気管支喘息やアスピリン(NSAIDs)不耐症を合併している方 — 周術期の管理に注意が必要です
- 鼻茸(鼻ポリープ)が大きい方、両側に多発している方
- 抗凝固薬・抗血小板薬を服用中の方(休薬の可否を処方医と相談します)
- 鼻中隔弯曲症(鼻中隔湾曲症)やアレルギー性鼻炎を併せてお持ちの方 — 同時に手術したほうが結果が良くなる場合があります
- 嗅覚障害(においがわかりにくい)が主な悩みの方 — この手術でまず改善が見込めるのは鼻づまりです。においの回復はお約束できません(7割程度の方で手術の前より改善すると言われますが、まれに悪くなる方もいます)。診察で率直にご説明します
× 当院では対応できない方(他院をご紹介します)
- 18歳未満の方(小児)
- 妊娠中の方
- 高熱、強い顔面痛、目のまわりの腫れ・充血、視力の低下、ものが二重に見える、激しい頭痛や意識のもうろうがある方 — 眼窩内・頭蓋内(目のまわり・頭の中)の合併症が疑われる緊急事態です。当院ではなく、すぐに入院設備のある救急医療機関を受診してください
- 副鼻腔の腫瘍性疾患、浸潤性の真菌症などで拡大手術・頭蓋底手術が必要な方
- 心臓や血管(動脈)の病気、肺の病気や重い喘息などの併存疾患があるなど、年齢や全身状態から日帰りではなく入院して全身麻酔の手術を受けるほうが適切と判断される方 — 麻酔科専門医が手術前に評価し、入院設備のある連携医療機関をご紹介します
※ 当院では全身麻酔で内視鏡下鼻・副鼻腔手術(ESS)を行います。ESSは、病変の広がりによって、手術時間と体への負担(侵襲)が大きく変わります。そのため、CTの結果をもとに、日帰りで安全に行える範囲かを診察時に判断します。日帰りで対応できない範囲と判断した場合は、入院設備のある連携医療機関をご紹介します。
- 日本鼻科学会. 鼻副鼻腔炎診療の手引き. 日本鼻科学会会誌. 2024;63(1):1-83.
- 日本鼻科学会 急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン作成委員会. 急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン2010年版 追補版. 2014.
- Fokkens WJ, et al. European Position Paper on Rhinosinusitis and Nasal Polyps 2020 (EPOS 2020). Rhinology. 2020;58(Suppl S29):1-464.
- Orlandi RR, et al. International consensus statement on allergy and rhinology: rhinosinusitis 2021 (ICAR-RS). Int Forum Allergy Rhinol. 2021;11(3):213-739.
- 難病情報センター. 好酸球性副鼻腔炎(指定難病306).
慢性副鼻腔炎の手術のご相談(2027年1月5日 保険診療開始予定): WEB予約 / お問い合わせ
当院の手術方法(内視鏡下鼻・副鼻腔手術:ESS)・痛み・リスク
内視鏡下鼻・副鼻腔手術(ESS)は、鼻の穴から内視鏡と細い器械を入れて行う手術です。手術では、ふさがった自然口を広げます。
あわせて、炎症を起こした粘膜や鼻茸、隔壁になっている薄い骨を取り除きます。こうして、副鼻腔と鼻腔をひとつの広い空間としてつなげます。
これにより換気と排液が回復し、薬(特に鼻噴霧用ステロイドや鼻洗浄)が病変部に届くようになるため、術後の薬物治療の効果も高まります34。鼻の穴から行う手術で、顔の皮膚は切りません。
| 術式の区分 | 開ける範囲 | どんな場合に |
|---|---|---|
| Ⅰ型(副鼻腔自然口開窓術) | 自然口だけを広げる | 炎症が軽く、通り道の確保で足りるとき |
| Ⅱ型(副鼻腔単洞手術) | 1つの副鼻腔 | 上顎洞など1か所に病変が限られるとき |
| Ⅲ型(選択的(複数洞)副鼻腔手術) | 複数の副鼻腔 | 病変が数か所にわたるとき(標準的な範囲) |
| Ⅳ型(汎副鼻腔手術) | すべての副鼻腔 | 両側に広く病変があるとき。日帰りで安全に行える範囲かをCTで判断します |
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鼻中隔の曲がりや下鼻甲介のはれを併せてお持ちの方は、鼻中隔矯正術や下鼻甲介の手術を同じ日に行うことがあります。必要かどうかは事前のCTと鼻内視鏡でわかるので、診察のうえでご提案します。
鼻中隔の手術をいっしょに行うのはなぜ?
鼻中隔(鼻の左右を仕切る壁)が大きく曲がっていると、副鼻腔の手術で使う内視鏡や道具が奥まで届きにくくなります。ヨーロッパの診療ガイドライン(EPOS 2020)は、副鼻腔の手術のときに鼻中隔も直すかどうかを、次の3つの点で考えるよう示しています3。
- 鼻中隔の曲がりが、鼻づまりの原因になっているか
- 曲がりが、副鼻腔の手術の通り道をふさいでいるか
- 直すことで、手術のあとの処置(鼻の中の清掃や点鼻薬)がしやすくなるか
実際にどのくらい一緒に行われているか
アメリカの民間保険の記録を使った研究では、2016〜2023年に初めて副鼻腔の手術を受けた成人97,544人のうち、49,498人(50.7%)が鼻中隔の手術も同じ日に受けていました11。この研究は、手術のあとの鼻の中の清掃と再手術の関係を調べたもので、50.7%は対象になった方の特徴として報告された数字です。
一緒に行う割合は国によって異なり、イギリスの全国統計では約2〜3割でした3。いずれも海外のデータで、当院での割合ではありません。当院で一緒に行うかどうかは、CTと鼻内視鏡の結果をもとに、診察でご相談して決める予定です。
手術後の痛みはどのくらい?
手術のあいだは全身麻酔で眠っているため、痛みは感じません。手術のあとは、鼻の中に止血用の材料が入っている1〜2日目に鼻づまり感と痛みがもっとも強くなります。
その後は、日ごとに軽くなります。鼻の手術(鼻中隔矯正術)で詰め物をした50人を調べた研究があります。
痛みは10点満点で、1〜2日目が平均6点前後、5日目には平均2.5点まで下がっていました10。当院では、痛み止めの使い方をふくめた手術のあとの計画を、麻酔科専門医が手術の前からご説明する予定です。
起こりうるリスクと、当院の対応
副鼻腔は目や脳と薄い骨で隣り合っています。生命に関わる事態はきわめてまれですが、頻度はゼロではありません。リスクを伏せずにご説明したうえで、手術を決めていただきます。
※合併症の内容と頻度は、手術の範囲・病変の広がり・体の状態によって異なります。具体的な見込みは診察のときに個別にご説明します。
手術時間と当日の流れ
手術時間はどのくらい?
手術そのもの(執刀時間)は約1〜2時間です。開ける副鼻腔の範囲(Ⅰ型〜Ⅳ型)と、鼻中隔矯正術・下鼻甲介手術を同時に行うかで変わります。受付から帰宅までは、次の内訳でおおむね3〜4時間を見込んでください。
| 当日の区切り | 行うこと | 時間の目安 |
|---|---|---|
| 来院〜手術前 | 受付・着替え・点滴、麻酔科医による最終確認 | 約1時間 |
| 手術 | 全身麻酔で眠っている間に、鼻の穴から内視鏡を入れて自然口を広げ、膿や鼻茸を取り除きます | 約1〜2時間 |
| 回復室 | 麻酔から覚め、出血がないことを確認します | 約1時間 |
| 帰宅 | 付き添いの方とご一緒に。当日はご自身での運転はできません | — |
初診から術後の通院までの流れ(7ステップ)
手術当日の注意
- 麻酔の影響が残るため、ご自身での自動車・バイク・自転車の運転はできません。公共交通機関かご家族の送迎をご利用ください
- 当日は入浴・飲酒・激しい運動を控え、鼻をかまないでください
- 横になるときは上半身を少し高くすると、はれと出血をおさえやすくなります
帰宅後にすぐ連絡していただく症状
- 鼻血が止まらない、のどに血がたくさん流れ落ちる
- 目のまわりの腫れ・強い痛み、視力の低下、ものが二重に見える
- 激しい頭痛、高熱、水のようにさらさらした鼻水が続く
副鼻腔は目や脳と薄い骨で隣り合っているため、これらは早く対応が必要なサインです。
入院期間・回復・仕事復帰・通院
入院は必要ですか?
| ケース | 入院の目安 | 当院での対応 |
|---|---|---|
| 薬で改善しない慢性鼻副鼻腔炎の内視鏡手術(ESS) | 入院なし(当日帰宅) 回復室で約1時間の経過観察ののち、帰宅いただける見込みです | 対応予定(全身麻酔・日帰り) |
| 病変が広範囲で、出血や合併症のリスクが高いと判断した場合 | 数日の入院が望ましいことがあります | 対象外(入院設備のある連携医療機関をご紹介) |
| 高熱・強い顔面痛・目のまわりの腫れなど急性期の合併症が疑われる場合 | 入院での治療が必要です | 対象外(すぐに救急医療機関へ) |
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※副鼻腔炎の手術は、病変の広がりによって体への負担(侵襲)が大きく変わります。CTの結果から入院での管理が望ましいと判断した場合は、入院設備のある連携医療機関をご紹介します。
術後の回復スケジュール
手術のあと1週間は、止血用の綿とかさぶたのためにかえって鼻がつまったように感じる時期です。翌日の受診で奥側の綿を外すと、圧迫感が軽くなります。
1週間の受診で綿をすべて外すと、そのあとから鼻の通りの変化を実感し始める方が多くなります。自宅では、処方された飲み薬・点鼻薬を使います。
加えて、翌日から鼻洗浄を1日2〜3回続けていただきます。鼻洗浄を続けるとかさぶたが柔らかくなり、受診のときの処置の痛みも軽くなります。
| 時期 | できること・お願いしたいこと |
|---|---|
| 手術当日 | その日のうちに帰宅(ご自身での運転はできません)。鼻の中には止血用の綿が入っています。痛み止めは当日は決まった時間に飲んでいただきます。シャワー・入浴は当日はお休みです |
| 翌日(受診1回目) | 鼻の奥側の綿を外します(圧迫感がかなり軽くなります)。この日から鼻洗浄を1日2〜3回始めます。受診のあとは歩行・外出ができます。デスクワークは翌々日から再開できます。夜からぬるめのシャワーができます。鼻の入口には綿球を入れておいていただきます |
| 翌日〜1週間 | 鼻はかまないでください(垂れてきたら軽くぬぐう。くしゃみは口を開けて)。1週間の受診までは、前かがみ・重い物を持つ・運動・湯船・お酒・たばこ・自転車や車の運転・立ち仕事を控えます。痛み止めは痛いときだけ(1週間弱で不要になる方がほとんど)。次の症状は、この時期の正常な経過です:少量の出血が混じった鼻汁、鼻づまり、頭が重い感じ、においの低下、歯の違和感 |
| 1週間(受診2回目) | 残りの綿をすべて外し、かさぶたの処置をします。この受診のあとから、次のことを再開できます。鼻をかむ、湯船やサウナ、通常の運動と高負荷の運動、水泳、運転、立ち仕事や力仕事、お酒、たばこです。鼻づまりや鼻汁の変化を実感し始めるのも、このころです。においは、受診のあと徐々に戻っていきます |
| 2週間ごろ〜 | 飛行機(気圧の変化)は術後2週間ごろから。搭乗の予定がある方は前もってお伝えください |
| 1〜1.5か月(受診3回目) | 経過の確認とかさぶたの処置。鼻洗浄と薬は続けます |
| 3か月(受診4回目) | 慢性副鼻腔炎の方は、飲み薬・点鼻薬・鼻洗浄は通常ここまで(続けたほうが楽な方は続けます)。経過がよければ通院の区切りです。経過によっては、その後も3か月おきを目安に診察を続けます |
| 6・9・12か月 | 好酸球性副鼻腔炎の方は、1年を目安に3か月ごとの診察を続け、薬と鼻洗浄も1年以上続けます。再発しやすい病気なので、経過をきちんと追うことが治療の一部です |
| 手術のあとの症状 | 受け止め方 |
|---|---|
| 正常な経過として前もってお伝えしておくもの | 鼻づまり(止血用の綿と腫れによるもの。綿を外し、腫れが引くにつれて楽になります)/血の混じった鼻汁/頭が重い感じ/においがわかりにくい(1週間の受診まで続くことがあり、そのあと徐々に戻ります)/歯の違和感 |
| すぐに当院へ連絡していただきたいもの | 出血が明らかに増えたとき。目安は、鼻の入口に入れた綿球を5分おきに取り替えなければならない状態が30分以上続く場合です。診療時間外の連絡方法は手術のときにお渡しします |
※上の表は、当院の耳鼻咽喉科医が通常ご説明している内容をもとにした当院の目安です。回復には個人差があり、実際の時期は診察で鼻の中を確認したうえで一人ひとりにお伝えします。鼻中隔矯正術や下鼻甲介の手術を同時に行った場合も、同じ目安です。
仕事にはいつから復帰できますか?(職種別の目安)
| お仕事の種類 | 復帰の目安 | 補足 |
|---|---|---|
| デスクワーク・在宅勤務 | 翌々日〜 | 綿とかさぶたによる鼻づまり感が残る時期です。短時間から戻すことをお勧めします |
| 立ち仕事・接客・軽作業 | 1週間の受診のあと〜 | 長時間の立位は、体調を見ながら段階的に |
| 力仕事・重い物を持つ作業 | 1週間の受診のあと〜 | それまでは前かがみや重い物を持つ動きも控えてください(出血のもとになります) |
| 運動・水泳・飲酒・たばこ・湯船やサウナ | 1週間の受診のあと〜 | 飛行機は術後2週間ごろから(搭乗の予定は前もってお伝えください)。鼻をぶつけるおそれのあるスポーツは診察で相談してから |
| 自転車・車の運転 | 1週間の受診のあと〜 | 当日は全身麻酔の影響が残ります。翌日以降も綿が入っているあいだは運転を控えてください |
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術後の通院はどのくらい続きますか?
術後は、翌日・1週間後・1〜1.5か月後・3か月後を目安に受診していただき、鼻の中の清掃と内視鏡での確認を行います。慢性副鼻腔炎の方は、飲み薬・点鼻薬・鼻洗浄を3か月の受診まで続け(続けたほうが楽な方は続けます)、経過がよければそこが通院の区切りです。
好酸球性副鼻腔炎の方は、3か月ごとの診察を1年まで(3・6・9・12か月)続け、薬と鼻洗浄も1年以上続けます。このタイプは手術のあとに再発しやすいため、風邪をひかないよう気をつけていただきながら経過をきちんと追うことが治療の一部です。
通院回数が少ないことより、術後のケアまで含めて良い状態を保つことを当院は重視しています。
傷病手当金・民間の医療保険について
- 傷病手当金(健康保険):連続する3日間の休み(待期)のあと、4日目以降に休んだ日が対象です。数日で復帰できた場合は、要件を満たさないことが一般的です。休職期間が生じる場合は、ご加入の健康保険にご確認ください
- 民間の医療保険・共済:手術給付金は、日帰り手術でも対象となる商品が多くあります。ただし、条件は契約内容によって異なります。「内視鏡下鼻・副鼻腔手術(日帰り)」が対象かどうか、ご契約先にご確認ください
- 診断書・手術証明書の文書料は健康保険の対象外(自費)で、高額療養費の計算にも含まれません
手術の費用(保険診療の場合)
健康保険が使えます。内視鏡下鼻・副鼻腔手術(ESS)は、開ける副鼻腔の範囲によってⅠ型からⅣ型に分かれます。型ごとに、診療報酬点数が異なります。下の表は、保険診療の場合の手術料だけを取り出した目安です。金額は3割負担・片側あたりです8。両側に行う場合は、原則としてこの2倍になります。麻酔・検査・薬・再診のお金は、別にかかります。
| 術式 | 点数 | 3割負担(片側) |
|---|---|---|
| 内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅰ型(副鼻腔自然口開窓術) | 3,600点 | 10,800円 |
| 同Ⅱ型(副鼻腔単洞手術) | 12,000点 | 36,000円 |
| 同Ⅲ型(選択的(複数洞)副鼻腔手術) | 24,910点 | 74,730円 |
| 同Ⅳ型(汎副鼻腔手術) | 32,080点 | 96,240円 |
| 鼻中隔矯正術(同時に行う場合) | 8,230点 | 24,690円 |
| 内視鏡下鼻腔手術Ⅰ型(下鼻甲介手術) | 7,940点 | 23,820円 |
実際には、両側に複数の術式を組み合わせて行うことがほとんどです。全身麻酔で同様の手術を行っている国内の施設では、総額20万〜30万円台(保険診療・3割負担)と公表されています。当院でも同程度の総額を見込んでいます。ただし次の項のとおり、1か月の自己負担には上限があります。
費用の見込みを含めた手術のご相談(2027年1月5日 保険診療開始予定): WEB予約 / お問い合わせ
高額療養費制度で、1か月の自己負担は「頭打ち」になります
1か月(暦月)の自己負担が上限額を超えた場合、超えた分は高額療養費制度で払い戻されます9。上限額は年齢と所得で決まります。マイナ保険証を利用すると、窓口でのお支払いを最初から上限額までにとどめられます。事前に「限度額適用認定証」を取得しておいた場合も同じです。
薄い色が窓口での3割負担、濃い色が高額療養費制度を適用した後の自己負担額(区分ウの例)。手術と検査の月が分かれると、それぞれの月で別々に計算されます。
ほかの所得区分(ア・イ・エ・オ)と多数回該当の上限額を見る
| 所得区分 | 1か月の自己負担上限額 | 多数回該当 |
|---|---|---|
| ア(標準報酬月額83万円以上/年収約1,160万円〜) | 270,300円+(医療費−901,000円)×1% | 140,100円 |
| イ(53万〜79万円/年収約770〜1,160万円) | 179,100円+(医療費−597,000円)×1% | 93,000円 |
| ウ(28万〜50万円/年収約370〜770万円) | 85,800円+(医療費−286,000円)×1% | 44,400円 |
| エ(26万円以下/年収約370万円まで) | 61,500円 | 44,400円 |
| オ(住民税非課税世帯) | 36,900円 | 24,600円 |
※金額はいずれも保険診療の場合の目安です。確定した費用は術式が決まった段階で個別にお見積もりをお伝えします。当院の料金体系は保険診療開始(2027年1月5日予定)に合わせて確定します。詳しくは鼻の手術費用のページもご覧ください。
手術しない選択肢(薬物治療)との比較
慢性鼻副鼻腔炎の治療は、まず薬から始めます。手術は「薬を使い切っても残る症状」に対する次の段階で、薬をやめるためのものではありません。
| 薬物治療を続ける | 内視鏡手術(ESS)+術後の薬物治療 | |
|---|---|---|
| 向いている方 | 症状が12週未満、または薬をまだ十分に使っていない方。非好酸球性で炎症の範囲が限られる方 | 鼻噴霧用ステロイド・鼻洗浄・マクロライド少量長期投与を3か月程度以上続けても症状が残り、CTで手術による改善が見込める方13 |
| 期待できること | 鼻噴霧用ステロイドと鼻洗浄で症状をコントロールできる方は少なくありません | ふさがった自然口(副鼻腔の出入り口)を広げ、薬が病変部に届く状態に戻します。非好酸球性では、鼻づまりや膿性鼻漏(膿のような鼻水)が大きく改善し、長期に安定することが多くあります |
| 限界 | 自然口が完全にふさがっている、鼻茸が大きいなどの場合は、薬が病変部に届かないため薬だけで改善させることは困難です | 好酸球性副鼻腔炎では手術後も再発しやすく、術後の薬物管理が続きます(下のグラフ) |
| 通院 | 定期的な処方と内視鏡での確認 | 術後は翌日・1週・1〜1.5か月・3か月、その後は病状に応じて3か月おきの通院 |
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手術後に鼻茸(鼻ポリープ)が再発した割合 ― 副鼻腔炎のタイプ別(国内多施設研究・JESREC)
術後の経過観察(最長6年)での累積再発率
出典: 国内15施設・1,716人の慢性鼻副鼻腔炎患者を対象にしたJESREC研究(Kaplan–Meier法による累積再発率)6。好酸球性副鼻腔炎の重症度はJESRECスコアによる分類です。再発の定義や治療内容は施設により異なるため、当院での成績を示すものではありません。
当院の考え方
- 手術を検討する軸は、症状のつらさそのものよりも「薬を使い切ったか」と「CTで手術によって改善が見込める所見があるか」の2点です。CTで炎症が確認できても、生活に支障がなければ急いで手術する必要はありません。
- においの低下が続いている方は、早めの評価をお勧めします。炎症が長期間続くほど嗅神経(においの神経)そのものが傷み、手術をしても戻りにくくなることが知られています。
- 好酸球性副鼻腔炎(指定難病306)の方には、手術を「治療の終わり」ではなく「薬が効く状態に整える工程」としてご説明します。術後の管理計画まで、一緒に立てます。
日帰りで対応できる範囲と、入院をお勧めする場合
副鼻腔炎の手術は、病変の広がりによって手術時間と侵襲(体への負担)が大きく変わります。当院では、日帰りで安全に行える範囲かどうかを、CT所見をもとに診察のときに判断します。範囲を超える場合は、入院設備のある連携医療機関をご紹介します。
| 当院の日帰り手術(予定) | 入院での手術(連携医療機関) | |
|---|---|---|
| 対象になる病変 | CTで日帰りの範囲と判断した慢性鼻副鼻腔炎(鼻中隔・下鼻甲介の同時手術を含む) | 病変がきわめて広い、出血や合併症のリスクが高い、全身状態から入院管理が望ましい場合 |
| 麻酔 | 全身麻酔(麻酔科専門医が管理) | 全身麻酔 |
| 帰宅 | 当日(回復室で約1時間の経過観察後) | 数日の入院後 |
| 術後の通院 | 翌日・1週・1〜1.5か月・3か月 → その後は3か月おき | 退院後に同様の通院 |
| 費用の考え方 | 保険診療。1か月の自己負担は高額療養費の上限まで | 保険診療。差額ベッド代・食事代が別途かかることがあります |
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※どちらが優れているという比較ではなく、病変の広がりと体の状態に応じた使い分けです。
日帰りで対応できるかどうかの見極めのご相談(2027年1月5日 保険診療開始予定): WEB予約 / お問い合わせ
副鼻腔炎について(解説)
副鼻腔はどこにあり、何をしているのですか?
副鼻腔は、鼻腔(鼻の穴の奥の空間)を取り囲むように頭蓋骨の中にある空洞です。左右に4つずつ、合計8つあります。ほほの奥にあり、最も大きいのが上顎洞です。額の裏側にあるのが前頭洞です。両目の間にあり、細かい部屋に分かれているのが篩骨洞です。鼻の一番奥にあるのが蝶形骨洞です。
副鼻腔の内側は、細かい毛(線毛)を持つ粘膜でおおわれています。線毛は一定方向に動いて、粘液を自然口(副鼻腔の出入り口)へ運び出します。この仕組みを線毛輸送といいます。線毛輸送が働くことで、副鼻腔はきれいに保たれています。風邪やアレルギーで粘膜が腫れて自然口がふさがると、この排出の仕組みが止まります。すると、炎症が続きやすくなります。
急性と慢性はどう違うのですか?
鼻腔と副鼻腔の炎症は、連続して起こります。そのため現在の診療ガイドラインでは、鼻副鼻腔炎(rhinosinusitis)という用語が用いられます。
発症から4週未満のものを急性鼻副鼻腔炎、症状が12週以上続くものを慢性鼻副鼻腔炎と呼びます3。急性は、風邪をきっかけに起こることが多く、痛みや発熱を伴いやすくなります。
慢性は、鼻づまり・後鼻漏(鼻水がのどに流れ落ちること)・においの低下などがだらだらと続くのが特徴です。急性の症状が年に何度も繰り返す場合(反復性)も、慢性と同様に原因の評価が必要です。
どのような症状が出ますか?
主な症状は、鼻づまり(鼻閉)、粘り気のある鼻水や膿のような鼻水(膿性鼻漏)、のどに流れ落ちる後鼻漏、ほほや額の痛み・重さ、においがわかりにくい(嗅覚障害)、頭重感、長引く咳などです。慢性化すると、症状そのものは軽くても、嗅覚低下や後鼻漏、集中力の低下が続きます。その結果、生活の質(QOL)が大きく下がります。
どのような検査をしますか?
まず問診で、症状の種類と続いている期間を確認します。次に鼻内視鏡で、鼻の中を直接観察します。
粘膜の腫れ、膿の流出、鼻茸(鼻ポリープ)の有無、鼻中隔(鼻の左右を仕切る壁)の弯曲などを確認します。診断と手術計画には、CT検査が最も有用です。
CTでは、どの副鼻腔にどの程度の炎症があるか、骨の構造がどうなっているかを立体的に把握できます。あわせて血液検査(好酸球の割合やアレルギー検査)を行い、好酸球性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎の関与を評価します。
薬ではどのような治療をしますか?
好酸球性副鼻腔炎とは何ですか?
手術をすれば完全に治りますか?
非好酸球性の慢性鼻副鼻腔炎では、手術によって鼻づまりや膿性鼻漏が大きく改善し、長期に安定することが多くあります。一方、好酸球性副鼻腔炎は手術後も再発しやすいことが知られています。
そのため手術は、「治療の終わり」ではなく「薬が効く状態に整えるための工程」と位置づけられます。良い状態を保つには、術後も鼻噴霧用ステロイドや鼻洗浄を続けることが重要です。定期的に内視鏡で状態を確認していくことも重要です。
副鼻腔炎の手術に関するよくある質問
手術時間・入院・仕事復帰・費用については、ページ上部の数値カードと各セクションをご覧ください。
副鼻腔炎は手術したほうがよいですか?
症状が12週間以上続いている慢性鼻副鼻腔炎で、薬物治療を3か月程度以上続けても改善しない場合は、手術を検討する段階です。ここでいう薬物治療は、鼻噴霧用ステロイド・鼻洗浄・マクロライド少量長期投与などです。
逆にこの条件を満たしていない場合は、まず薬物治療を十分に行うことが先になります。判断の軸として、症状のつらさそのものより重視するのは次の2点です。
「薬を使い切ったか」と「CTで手術によって改善が見込める所見があるか」です。CTで炎症が確認できても、生活に支障がなければ、急いで手術する必要はありません。
手術をしなくても治せますか?
急性の副鼻腔炎は、多くが薬や自然経過で治ります。慢性鼻副鼻腔炎でも、非好酸球性のタイプで炎症の範囲が限られていれば、鼻噴霧用ステロイドと鼻洗浄を続けることで症状をコントロールできる方は少なくありません。
ただし、自然口が完全にふさがって換気と排液が止まっている場合があります。鼻茸が大きく、空気の通り道をふさいでいる場合もあります。
これらの場合は薬が病変部に届かないため、薬だけで改善させることは困難です。この状態では、手術は「薬が効く状態に戻すための工程」という位置づけになります。
手術しないとどうなりますか?
慢性鼻副鼻腔炎を放置しても、多くの場合、すぐに命に関わることはありません。ただし、鼻づまり・後鼻漏・においの低下が続くと、睡眠の質と日中の集中力が落ちます。
その結果、生活の質は下がっていきます。とくに嗅覚障害は、炎症が長期間続くほど嗅神経そのものが傷み、手術をしても戻りにくくなることが知られています。
においの低下が気になっている方は、様子を見続けるより、早めに評価を受けることをお勧めします。また、頻度はまれですが、炎症が目や脳の方向へ広がると重い合併症につながります。
手術を受けて後悔するのは、どんなときですか?
正直にお伝えすると、次の3つの場合に「受けなければよかった」と感じられることがあります。①好酸球性副鼻腔炎で、手術後に鼻茸が再発した場合。
このタイプは手術で完治する病気ではなく、術後も薬による管理が続きます。②嗅覚の回復を最大の目的にしていたのに、嗅神経の障害が進んでいて十分に戻らなかった場合。
③そもそも症状の主な原因が、副鼻腔炎ではなくアレルギー性鼻炎や鼻中隔弯曲症だった場合。いずれも、術前の評価で見通しを立てられるものです。
当院では、CT・鼻内視鏡の結果をもとに、「この手術で何がどこまで良くなる見込みか」「何は変わらないか」を先にお伝えします。納得いただいたうえで、手術を決めていただきます。
手術をお勧めしないほうがよいと判断した場合は、その理由もはっきりお伝えします。
手術で命に関わることはありますか?
生命に関わる事態が起こることは、きわめてまれです。ただし、副鼻腔は目や脳と薄い骨で隣り合っています。
そのため、眼窩内(目が入っている骨のくぼみの中)の損傷(視力障害・眼球運動障害)、髄液漏(脳の周りの液体が漏れること)、大量出血といった重い合併症が起こりえます。頻度は低いものの、ゼロではありません。
だからこそ当院では、CTによる術前評価で、日帰りで安全に行える範囲を厳密に見極めます。その範囲を超えると判断した場合は、入院設備のある連携医療機関をご紹介します。
リスクを伏せずにご説明したうえで、手術を決めていただきます。
手術で鼻の形や声は変わりますか?
鼻の形は変わりません。内視鏡下鼻・副鼻腔手術(ESS)は、鼻の穴から内視鏡を入れて副鼻腔の内部を操作する手術です。
鼻の外形を支える構造には、手を加えないためです。顔の皮膚も切開しません。
ただし、鼻中隔矯正術を同時に行う場合は、鼻を支える軟骨の一部を扱います。そのため、支持に必要な部分を残す設計が重要になります(詳しくは鼻中隔弯曲症のページ)。
声については、鼻と副鼻腔が声の共鳴に関わっています。そのため、鼻の通りが良くなることで、響きが変わったと感じる方がいます。
多くは「鼻がつまったような声(閉鼻声)が改善した」という方向の変化です。
においがわからなくなっています。手術で戻りますか?
においの神経は、鼻の天井(嗅上皮)にあります。鼻茸や粘膜の腫れで、空気が嗅上皮まで届かないことが原因の場合があります。
この場合は、手術で通り道を確保すると改善が期待できます。一方、炎症が長期間続いて神経そのものが傷んでいる場合は、回復に時間がかかったり、十分に戻らないこともあります。
手術前に、CTと鼻内視鏡の所見をもとに見通しを率直にご説明します。手術のあと1週間ほどは、綿の影響でにおいがわかりにくくなります。
そのあと、徐々に戻ります。長い目で見ると、においは7割程度の方で手術の前より改善すると言われています。
ただし、回復をお約束することはできません。まれに、手術のあとに悪くなる方もいます。この手術で改善が見込めるのは、まず鼻づまりです。
手術のあと、鼻の中に詰め物をするのですか?
はい。出血を抑えるため、手術のあと鼻の中に止血用の綿を入れます。
当院では、翌日の受診で奥側の綿を外す予定です(この時点で圧迫感がかなり軽くなります)。1週間の受診で、残りをすべて外す予定です。
それまでは、鼻の入口に綿球を入れてすごしていただきます。綿球を5分おきに取り替えなければならない状態が30分以上続くときは、すぐにご連絡ください。
翌日から鼻洗浄を1日2〜3回続けると、綿やかさぶたが外れやすくなり、処置の痛みも軽くなります。
花粉症やアレルギー性鼻炎も一緒に治療できますか?
アレルギー性鼻炎があると、慢性鼻副鼻腔炎が悪化しやすくなります。そのため、あわせて評価と治療を行います。下鼻甲介の肥大が強い場合や、鼻中隔の弯曲がある場合は、同じ手術のなかで対応することを検討します。 詳しくは慢性鼻炎のページ、鼻中隔弯曲症のページもあわせてご覧ください。
当院の体制と方針(予定)
関連するページ
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- 鼻の手術費用と高額療養費の上限
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- 匂いがしない・嗅覚障害の原因
参考文献
参考文献(11件)を表示する
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- 日本鼻科学会 急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン作成委員会. 急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン2010年版 追補版. 日本鼻科学会; 2014.
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ご相談・ご予約
当院は2026年12月開設・2027年1月5日 保険診療開始予定です。検査結果にもとづいて、手術が必要かどうかをご説明します。日帰りで安全に行える範囲かどうかの見極めについても、あわせてご説明します。