受診を急ぐ症状
数週間たっても消えない・硬い・大きくなるしこりは、早めに受診してください。出ていた膨らみが戻らず、強い痛みや吐き気を伴う場合は、至急の受診が必要です。
考えられる原因
足の付け根(鼠径部)のしこりには、複数の原因が考えられます。たとえば、鼠径リンパ節の腫れ、粉瘤や脂肪腫などの皮下のできもの、鼠径ヘルニア(脱腸)などです。
見分ける手がかり
見分けの手がかりになるのは「押すと痛いか」と「横になると消えるか」の2点です。立つと出て、横になると引っ込む「しこりのような膨らみ」は、鼠径ヘルニアで多くみられるパターンです。ただし、自己判断はせず、受診して確認することが必要です。
吉祥寺・武蔵野・三鷹・杉並・練馬にお住まいの方へ
横になると消える膨らみなら外科(消化器外科)、常にあるしこりは外科・皮膚科・内科で相談できます。吉祥寺駅徒歩2分の当院でも、外科専門医が診察する予定です。「ヘルニア? できもの?」と迷う段階のご相談も受け付ける予定です。
初診の流れを見る2026年12月開設・2027年1月5日 保険診療開始予定・受付準備中
「お風呂で体を洗っていて、足の付け根にコリッとしたものに気づいた」「痛くないしこりがあるが、何科に行けばいいかわからない」——足の付け根のしこりは、こうした形で気づかれることの多い症状です。
このページでいう「足の付け根」とは、太ももの付け根の前面(下腹部と脚の境目、鼠径部)を指します。痛みや膨らみも含めた鼠径部の症状全般は、鼠径部(そけいぶ)とはどこ?男性に多い膨らみ・痛みの解説ページにまとめています。このページでは、「しこり」に絞って詳しく解説します。
ひとくちに「しこり」といっても、硬さ・動き・体勢で出たり消えたりするかによって、考えられる原因は大きく変わります。見逃してはいけないサインもあわせて紹介します。
しこりを見分ける2つのポイントは?——「押すと痛いか」「横になると消えるか」
足の付け根のしこりに気づいたら、まず次の点を確認してみてください。
しこりの特徴チェック 当てはまるものを確認してみてください
項目を選ぶと、関連する説明へ移動します。診断を行うチェックではありません。
この2つの特徴を組み合わせた目安は、症状と原因の比較表で確認できます。
| 症状の特徴 | 考えられる原因 | 受診先の目安 |
|---|---|---|
| 立つと出て、横になると消える(痛みは軽いか、ない) | 鼠径ヘルニア(脱腸)の可能性——「しこり」に見えて、実は出入りする膨らみ | 外科・消化器外科 |
| 常にあり、押すと痛い | 鼠径リンパ節の腫れ/粉瘤の炎症(化膿)の可能性 | 内科・外科/皮膚科 |
| 常にあり、押しても痛くない | 脂肪腫・粉瘤などの皮下のできもの/痛みのないリンパ節の腫れの可能性 | 外科・皮膚科/内科 |
| 出ていた膨らみが戻らなくなり、硬く強い痛み・吐き気 | 嵌頓(かんとん)の疑い——至急受診(後述) | 至急:救急外来 |
図でも確認する(症状の見分け方)
小さい画面では図を左右にスクロールできます。上の表でも確認できます。
症状と原因の比較表を読む → 至急受診が必要なサインを確認する →「横になると消えるか」「押すと痛いか」の2点が手がかりになります。この図は受診の目安であり、診断ではありません。当てはまらない場合でも症状が続くときは医療機関にご相談ください。
以下、それぞれの原因について特徴を解説します。あくまで受診の参考となる目安であり、最終的な判断は診察で行われます。
横になると消えるしこりは?——鼠径ヘルニア(脱腸)の可能性
「しこりだと思っていたら、横になったら消えていた」——このように体勢で出たり消えたりする場合、皮膚の下のできものではなく、鼠径ヘルニア(脱腸)の膨らみである可能性があります。
鼠径ヘルニアは、腸などの内臓が筋膜の隙間から皮膚の下に出てくる病気です。立った時やお腹に力を入れた時に出て、横になると引っ込むのが典型的にみられるパターンです。
触った感じは柔らかい膨らみのことが多く、粉瘤や脂肪腫のような境界のはっきりしたしこりとは印象が異なります。ただし、触った印象だけでの自己判断は禁物です。
国内外の診療ガイドラインでは、成人の鼠径ヘルニアが自然に治ることはなく、根本的な治療は手術とされています[1][2][3]。放置しても膨らみが小さくなることはなく、時間とともに徐々に大きくなるのが一般的です。
他院の公表額を参考にした概算では、保険診療の場合、腹腔鏡による鼠径ヘルニアの日帰り手術は、3割負担で初診・通常の術前検査を含めて約11万〜13万円が参考目安です(高額療養費制度の適用前)。術後再診や追加検査などは別途で、麻酔・薬剤・医療材料などにより変わります。当院の確定料金ではありません。
鼠径ヘルニア手術の費用のページ
消えないしこりの原因は?——リンパ節・粉瘤・脂肪腫
横になっても消えず、常に同じ場所に触れるしこりは、皮膚や皮下のできもの、リンパ節の腫れが主な候補になります。
押すと痛むリンパ節の腫れは、なぜ起こる?
鼠径部には、脚や下腹部・陰部のリンパが集まる鼠径リンパ節があります。脚の傷や水虫、陰部の感染などに反応して腫れると、皮膚の下に豆のような、コロコロと動くしこりとして触れます。
押すと痛むことが多く、原因となった感染が落ち着くとともに小さくなっていくのが一般的です。数週間たっても小さくならない場合や、だんだん大きくなる場合は受診をおすすめします。
中央に黒い点があるしこりは?——粉瘤(アテローム)
粉瘤は、皮膚の下に袋状の構造ができ、垢や皮脂がたまってできる良性のできものです。しこりの中央に黒い点(開口部)がみられることがあり、内容物がたまって徐々に大きくなります。
細菌感染を起こすと、赤く腫れて押すと強く痛むことがあります(炎症性粉瘤)。この場合は皮膚科または外科での処置が必要になることがあります。
柔らかく痛みのないしこりは?——脂肪腫
脂肪腫は、皮下の脂肪のかたまりでできる良性のできものです。触ると柔らかく、痛みは通常なく、年単位でゆっくり大きくなります。
体勢を変えても、大きさは変わりません。この点が、鼠径ヘルニアの膨らみと区別する手がかりになります。大きくなって気になる場合は、外科・皮膚科で相談できます。
女性の足の付け根のしこりで気をつけることは?
女性・高齢の方では、鼠径部のやや下(太もも寄り)に出る大腿ヘルニアに注意が必要です。大腿ヘルニアは、嵌頓(腸が締めつけられる状態)を起こしやすい病気です。国際ガイドラインでも、嵌頓・絞扼のリスク因子として「女性」「大腿ヘルニア」が挙げられています[1]。
このため女性の鼠径部ヘルニアでは、経過観察ではなく手術(大腿ヘルニアの見逃しを避けられる腹腔鏡での診断・修復)が推奨されています[1]。

ヌック管水腫はどんな病気?
Nuck管水腫(ヌックかんすいしゅ)は、女性の足の付け根(鼠径部)や外陰部に、水がたまった袋ができ、しこりや膨らみとして現れる病気です。鼠径ヘルニアとよく似た膨らみができるため、見た目だけでは区別が難しいことがあります。[4]
ヌック管とは? 膨らみができるまで
ヌック管は、腹膜でできた袋状の構造です。女性がお母さんのお腹の中で育つ時期(胎児期)に、足の付け根にできます。通常は、生まれる前から乳児期にかけて閉じます。ただし、一部が残ることがあります。[7]
- ヌック管の一部が袋状に残る
- 袋の中に液体がたまる
- 大きくなると、しこりや膨らみとして気づく
このような経過で現れることがあります。この液体のたまった袋を「水腫(すいしゅ)」と呼び、「嚢腫(のうしゅ)」と表現されることもあります。[7]
子どもだけでなく、20〜40代の成人女性にもみられます。ただし、この年齢に限る病気ではありません。[7]
ヘルニアとの違いは? 手術を急ぐ必要はある?
ヌック管水腫そのものは、通常は緊急の手術が必要な病気ではありません。ただし、鼠径ヘルニアを伴うこともある[5]ため、見た目だけでは判断しません。診察や超音波(エコー)検査などで確認します。
急に強く痛む場合や、吐き気・嘔吐を伴う場合は、水腫だと自己判断しないでください。至急受診が必要なサインを確認してください。
ヌック管水腫の症状・見分け方・手術は、ヌック管水腫の専用ページで詳しく解説しています。
痛くないしこりは放置してもいい?
足の付け根のしこりは、良性のものが少なくありません。ただし、「痛くないから大丈夫」とは限りません。痛みのないリンパ節の腫れの中に、まれにリンパ節の病気が隠れていることもあります。
不安なまま様子を見続けるより、次のいずれかに当てはまるしこりは、一度医療機関で確認してもらうのが安心です。
- 数週間たっても消えない
- 触ると硬い、または動きが悪い
- 徐々に大きくなってくる
- 複数のしこりが触れる、発熱や体重減少を伴う
診察と超音波検査などで原因を確認できれば、良性とわかって安心できるケースも多くあります。「調べて何もなければそれでよし」という気持ちでの受診をおすすめします。
どんなときは至急受診が必要?——出ていた膨らみが戻らないとき(嵌頓)
それまで出たり消えたりしていた膨らみが戻らなくなり、硬いしこりのようになって強く痛む場合は、ヘルニアの嵌頓(かんとん)の可能性があります。嵌頓とは、飛び出した腸が締めつけられて戻らなくなった状態です。
放置すると腸の血流が悪くなり、緊急手術が必要になることがあります。
至急受診|次の症状があるとき
- 出ていた膨らみが押しても戻らない
- 膨らみが硬いしこり状になり、強い痛みがある
- 吐き気・嘔吐、お腹の張りを伴う
様子を見ず、速やかに救急外来の受診または救急車の要請をご検討ください
何科を受診?
| しこりのタイプ | 受診先の目安 |
|---|---|
| 出たり消えたりする膨らみ・しこり | 外科・消化器外科(鼠径ヘルニアの診療科) |
| 皮膚のできもの(黒い点がある・赤く腫れている) | 皮膚科または外科 |
| 押すと痛む豆状のしこり(リンパ節の腫れの疑い) | 内科・外科 |
| どれか判断がつかない | まずは外科または近くのかかりつけ医へ |
診察では、しこりの位置・硬さ・動き・体勢による変化を確認し、必要に応じて超音波(エコー)検査を行います。痛みを伴う検査は基本的にありません。
鼠径ヘルニアは、典型的な症状や所見があれば、大多数は診察だけで診断を確定できるとされています[1]。
執筆者より(高宮・麻酔科専門医):「できものだと思って様子を見ていたら、出入りするヘルニアの膨らみだった」。これまで勤務してきた病院で、麻酔科医として手術に立ち会う中で、そうした経過をたどった方に接することがありました(当院開院前の、これまでのキャリアにおける経験です)。
しこりか膨らみか迷ったら、「横になると消えるか」がひとつの手がかりになります。触ってわかる変化が続くときは、早めの受診をご検討ください。
いつ受診?——受診の目安まとめ
- 至急(当日):出ていた膨らみが戻らない+強い痛み・嘔吐 → 救急受診
- 早めに(数日〜1週間以内):数週間消えないしこり/硬い・大きくなってくるしこり/出たり消えたりする膨らみに気づいた
- 様子を見つつ受診を検討:脚の傷や感染のあとに出た、押すと痛むしこりが小さくなってきている場合(数週間しても消えなければ受診)
当院について
吉祥寺日帰り手術クリニックは、鼠径ヘルニアをはじめとする日帰り手術を専門とするクリニックとして、2026年12月に吉祥寺(JR吉祥寺駅 徒歩2分)に開院予定です。
外科専門医と麻酔科専門医の2名体制で、腹腔鏡による鼠径ヘルニア手術(TAPP法)を日帰りで行う予定です。「このしこりはヘルニア? できもの?」と迷う段階のご相談も受け付ける予定です。
※開院時期・診療体制は、保健所への開設届出等の手続き状況により変更になる場合があります。
よくある質問
Q. 痛くないしこりでも受診したほうがいいですか?
痛みがなくても、しこりの性状によっては受診が望ましい場合があります。「数週間たっても消えない」「触ると硬い・動きが悪い」「徐々に大きくなる」「発熱や体重減少を伴う」。このいずれかに当てはまる場合は、原因を確かめるための受診をおすすめします。
Q. 押すと痛いしこりの原因には何がありますか?
考えられる原因は、脚や陰部の傷・感染に伴う鼠径リンパ節の腫れや、炎症性粉瘤(粉瘤が細菌感染を起こした状態)などです。痛みや腫れが数週間続く場合は、受診をご検討ください。
Q. 横になるとしこりが消えるのはなぜですか?
体勢で出たり消えたりする場合は、皮下のできものではなく、鼠径ヘルニア(脱腸)の膨らみの可能性があります。鼠径ヘルニアでは腸などの内臓が出入りするため、立つと出て、横になると戻ります。外科の受診をご検討ください。
Q. しこりが硬くなり、強い痛みや吐き気があります。どうすればいいですか?
鼠径ヘルニアの嵌頓(かんとん)の可能性があります。嵌頓とは、飛び出した腸が締めつけられて戻らなくなった状態です。様子を見ずに、速やかに救急外来を受診するか、救急車の要請をご検討ください。
Q. 何科を受診すればいいですか?
受診先の目安は次のとおりです。出たり消えたりする膨らみは、外科・消化器外科です。皮膚のできものは、皮膚科または外科です。押すと痛む豆状のしこりは、内科・外科です。判断がつかない場合は、外科またはかかりつけ医にご相談ください。
Q. 女性の足の付け根のしこりで気をつけることはありますか?
女性では、嵌頓しやすい大腿ヘルニアの割合が比較的高いという特徴があります。また、女性特有のヌック管水腫がしこりの原因になることがあります。片側だけのしこりや膨らみが続く場合は、受診をご検討ください。
Q. しこりの診察では何をしますか?
一般的には、しこりの位置・硬さ・動き・体勢による変化を、視診・触診(目で見て、手で触れる診察)で確認します。必要に応じて、超音波(エコー)検査を行います。痛みを伴う検査は基本的にありません。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断や治療方針に代わるものではありません。
関連コラム
- 脱腸(鼠径ヘルニア)とは|症状・原因・治し方をやさしく解説
- 女性の鼠径部・足の付け根の痛み|片方だけ痛いときに考えられる原因
- ヌック管水腫(Nuck管水腫)とは|女性の足の付け根のふくらみの原因・症状・診断・日帰り手術
ご相談・ご予約
当院は2026年12月開設・2027年1月5日 保険診療開始予定です。手術に関するご相談・ご予約の受付開始時期は、下記の受付状況ページでご案内します。
参考文献
参考文献(7件)を読む
- HerniaSurge Group. International guidelines for groin hernia management. Hernia. 2018;22(1):1-165. doi:10.1007/s10029-017-1668-x(PMID: 29330835)
- Stabilini C, van Veenendaal N, Aasvang E, et al. Update of the international HerniaSurge guidelines for groin hernia management. BJS Open. 2023;7(5):zrad080. doi:10.1093/bjsopen/zrad080(PMID: 37862616)
- 日本ヘルニア学会ガイドライン作成検討委員会 編. 鼠径部ヘルニア診療ガイドライン2024[第2版]. 金原出版; 2024. ISBN 978-4-307-20474-3.
- 田上創一. Nuck管水腫とは? 横浜青葉そけいヘルニア・外科クリニック. 2026年7月27日(同年8月21日更新). 解説記事(2026年9月24日閲覧).
- Kucera PR, Glazer J. Hydrocele of the canal of Nuck. A report of four cases. J Reprod Med. 1985;30(5):439-442. PMID: 3925139.
- 村上英嗣ほか. 成人にて発症した子宮内膜症を伴ったNuck管水腫の1例. 日本臨床外科学会雑誌. 2013;74(5):1388-1391. doi:10.3919/jjsa.74.1388.
- Fikatas P, et al. Hydroceles of the Canal of Nuck in Adults—Diagnostic, Treatment and Results of a Rare Condition in Females. J Clin Med. 2020;9(12):4026. doi:10.3390/jcm9124026.
文献[1][2]の書誌情報は PubMed(米国国立医学図書館)の書誌データに基づきます(2026年7月確認)。文献[3]は日本ヘルニア学会発行の診療ガイドライン(書籍)です。